ビジネス

2020.11.02 18:00

グーグルに「成功」を授けた師の教え。人は5分で救える、「ギバー」であれ


私たちも長年のあいだに二度ほど同僚に頼みごとをする機会があった。大きな頼みではないが、手続きを飛ばしたり、小さなルールを曲げたりする必要があった。誰も傷つかないことで、じっさい、メリットだけを考えれば絶対的に正しいことだった。それでも頼みは聞いてもらえなかった。

「すまない、それはできない」がお決まりの返答だ。「わかるだろう、手続きがあるから……」

ビルなら「クソくらえ」と返しただろう。彼は人の頼みを聞くことを信条としていた。彼は寛大で人助けが好きだったから、ユーチューブのCEOを絶対に出るべきイベントに出席させるためとあれば、何のためらいもなく友人に頼んだ。

彼が手を貸したのは、仲間の幹部たちだけではない。たとえばビルはジョナサンの事務スタッフのチャデという若い女性と知り合い、ジョナサンがごくまれにビルをオフィスの外で待たせたときに、二人でおしゃべりをしていた。

ある日ビルが最近どうしているのかと聞くと、チャデはLSAT(法科大学院適性試験)を受けてロースクールに行くことを考えていると言った。でも彼女は辞めるタイミングについてボスであるジョナサンにどう思われるかを心配し、いつ願書を出すべきか、ボスにいつ何と言うべきか悩んでいた。

ビルがジョナサンに会ってこの話をすると、ジョナサンは自分のスタッフが一流ロースクールをめざしていることを知らなかったと認めた。

「もっと部下のことを知らなくては!」とビルは諭した。「いますぐチャデのところに行って、いつ学校に戻っても大丈夫だと言ってやれ。君は彼女のボスなんだから、いい推薦状を書いてやれ、それが君の務めだ」

チャデは翌年コロンビア・ロースクールに入学し、数年後に卒業して、現在はボストンで弁護士をしている。

「5分間の親切」が、簡単かつ効果が最大


ビルは人を助けるのが好きで、信じられないほど寛大だった。ビルと一緒のときは食事やドリンクの支払いをする必要がなかった。あるときカボで友人たちと休暇を過ごしていたビルは、彼らの子どもたちをみんな夕食に連れていき、全員にバーのTシャツを買ってあげた。毎年のクリスマスパーティには最高級の赤ワインを何箱も買った。ワインが好きだからではなく、友人たちがワインをおいしそうに飲むのを見るのが好きだったからだ。

そりゃ金持ちはTシャツやワインをばらまけるさと、あなたは思うかもしれない。たしかにそうだ。

でもビルは金持ちになるずっと前からそうだった。彼は寛大な精神を持っていた──それはお金がなくても、誰にでも持てるものだ。たとえば彼はとても多忙だったが、自分の時間を惜しみなく人に与えた。予定表は2か月先しか空いていなくても、本当に彼を必要としている人には、すぐに電話をかけた。
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