──教授の著書に出てくる「人材クラスター」について教えてください。
専門分野の最前線で働く優秀な人材が集まる場所のことだ。サンフランシスコやニューヨークでは、世界中から集まった高スキル人材が影響を及ぼし合いながら働ける労働・社会環境が整っている。
シリコンバレーが、インド系や中国系が集まる世界屈指の人材クラスターになった背景には、東海岸に比べアジアから近いことや、テックセクターの隆盛などがある。
東京も人材クラスターになりつつあるが、国際性では向上の余地があるだろう。高スキルを持った移民を増やす最大のカギは、世界の人材を歓迎し、彼らが日本の企業で出世できるような文化を築くことだ。
──移民が子供に米国で教育を受けさせ、2世代にわたってアメリカン・ドリームを実現しようとする例も多いそうですね。
多大な犠牲を払ってでも、米国生まれの子供に世界トップクラスの教育を受けさせることは、移民にとって重要な意味を持つ。
中国系とインド系が増えた背景には、両国の中流層が豊かになり、子供を米国の大学に入れる余裕ができたという事情もある。
米国は、無限の可能性がある国だが、実際にはアメリカン・ドリームの実現は難しくなっている。米国の課題は、アメリカン・ドリームを仮説に終わらせないよう、最大限の努力を払うことだ。
ウィリアム・R・カー◎ハーバード大学ビジネススクール教授。同校「新規ベンチャー起動」プログラム責任者。また、専門とする起業とイノベーション、企業内起業について教えている。