テクノロジー

2021.04.11 12:30

「革命的」レーダー技術がローマの古代都市の全貌を解き明かす

イタリア、ラツィオ州、ファレリイ・ノーヴィの城壁にあるジュピター門(ローマ文明)

イタリア、ラツィオ州、ファレリイ・ノーヴィの城壁にあるジュピター門(ローマ文明)

ケンブリッジ大学(英国)とゲント大学(ベルギー)の考古学者による共同研究チームは、地中レーダーを使ってイタリア、ファレリイ・ノーヴィに存在した古代ローマの都市をデジタル技術で再現した。この技術は今後の考古学に革命をもたらすと歓迎されている。

掘削することなく古代ローマの都市を特定


考古学者はローマから50キロ北に位置する古代ローマの都市を、掘削作業を行うことなく特定した。掘削の代わりに用いたのは、物質によって反射が異なる電磁波の性質を利用した地中探知レーダー(GPR)だ。

「反射波の波形と反射の速度を測定することで、垂直断面図(レーダーグラム)や疑似断面(プロファイル)を作成できる」と、研究チームはケンブリッジ大学の発行する雑誌『古代(アンティクワティ)』に掲載した論文で述べている。「何枚もの平行した垂直断面図と、異なる深さの水平断面図(タイムスライスもしくは深度スライス)を作ることができる」


Massimo @Rainmaker1973のツイート↓
『考古学者が地中探知レーダーを使って、初めて地中にある都市の地図を制作した。古代ローマの都市、ファレリイ・ノーヴィの地図はレーダーを使って取得したデータをもとに作成された。』

考古学者によれば、このレーダー技術が「古代都市研究に革命を起こす可能性がある」という。古代ローマの都心部についての現在知られていることは、おもにポンペイやオスティアなど研究が進んでいる数少ない都市から得たものに限られているからだ。

GPR技術のおかげで、古代ローマ人の都市建設法に対する理解がさらに深まり、これまでは不可能だった詳細な古代都市の地図を作ることができるようになった。

ファレリイ・ノーヴィでは、ケンブリッジ大学とゲント大学の研究者がレーダー技術を導入して、いままでは掘削しなければ見つからなかった様々な建築物をはっきり特定した。すでに寺院、市場、浴場が発見されている。

「こうした建物が古代ローマ都市にあることは予想の範囲内だが、なかには建築学的に見て高度な建物が含まれている。普通なら小さい町にはあるはずもない精巧な建物が」と、研究チームは書いている。


As It Happens@cbcasithappensのツイート↓
『「イタリアのファレリイ・ノーヴィにはさほど見るべきものはない。だが地下に目を向ければ話は別だ」考古学者のリーヴェン・ヴァードンクは古代都市の地図製作に地中探査レーダーを利用することについて、CBCラジオの記者キャロル・オフにそう語った。』

予想外の発見もあった。中央を円柱の列で区切った屋根付きポーチ(ポルティコ)は、これまで見られたことのない建築物で、おそらく公共の記念建造物だろうと考えられる。また、町を囲む儀式用の道路についても精密な地図が作成された。この道路は、発掘しただけでは見つからなかった可能性が高い。

これまでの発見から得られた2つの結論


考古学者によれば、ファレリイ・ノーヴィに関する研究はまだ初期段階にあるようだが、これまでの発見からすでにふたつの結論が導き出されている。「ひとつは、高解像度のデータが得られ、深度ごとの明確な特徴をはっきり見分けられることによって、この都市の姿を把握するための堅固な基盤ができたこと」

「ふたつ目は、GPRを用いた調査結果とこれまでの磁気探知器での調査結果とを比較してみると、どちらの方法でもこの研究の全体像を描き出せないとわかったこと」だという。そのため考古学者は、「互いに欠点を補い合う調査法と、調査結果の統合」が必要であると強調する。GPR技術がすべての遺跡に使えるわけではないからだ。

共同研究チームは、今後の遺跡調査は異なる技術を組み合わせて行っていくことが大切で、そうすれば古代ローマの都心部に対する理解はさらに深まるだろうと結論している。

翻訳・編集=小林綾子/S.K.Y.パブリッシング

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