米商務省の同じデータを掘り下げれば、手がかりが得られるかもしれない。前年同月と比較すると、今年5月の小売企業の売上高は6.1%減、3月以降の3か月間では10.5%減となっている。衣料小売店の売上高は、5月は4月の3倍近くになったにもかかわらず、前年比では63%減の急落だ。同様のパターンは、デパート、家具販売店、飲食店、家電量販店にもみられる。
全米小売連盟(National Retail Federation)のチーフエコノミスト、ジャック・クラインヘンツ(Jack Kleinhenz)は6月16日の声明で、「完全な回復への道のりはまだはるかに遠い」と述べ、5月の消費者繰越需要の高まりには、景気刺激策と追加の失業給付が大きく貢献していたとの見解を示した。「消費はかなり回復したが、依然として1年前の水準を大きく下回っている。(中略)しばらくはジェットコースターのような乱高下が続くだろう」
4月との比較については、まるまる1か月にわたって「必要不可欠と判断されるもの以外はほぼすべてがシャットダウンしていた」事実に触れ、「そうした文脈を念頭において考える必要がある」とクラインヘンツは述べた。
米国経済が徐々に再開し、必要不可欠ではない小売店が、店頭や駐車場などの店外でのピックアップに限定して営業を再開し始めるなか、複数の州で新型コロナウイルスの感染者の急増がみられており、回復の兆しに暗雲がたちこめている。
一方、(人種差別に対する抗議運動から派生した)略奪や破壊行為が新たな懸念材料になっており、ニューヨークなどの大都市では、板張りされ休業を続ける店舗も目に付く。
調査会社リテイル・メトリクス(Retail Metrics)のプレジデントであるケン・パーキンス(Ken Perkins)は6月16日発表のリポートで、「失業率はまだ10%台前半で高止まりしており、小売業界が苦境を脱するのはずっと先になるだろう」と述べた。また、5月売上高の前年比での減少幅は、グレートリセッション(2007年の金融危機から2010年代はじめまで続いた世界的大不況)後では最大だったと指摘した。
多くの小売企業はパンデミック以前から厳しい状況にあったが、今回の危機が状況をさらに悪化させ、流動性を逼迫させた。リテイル・メトリクスのデータによれば、デパートの5月売上高は、前年比26%減で22年連続の減少。家電量販店の5月売上高は、前年比30%減で18年連続の減少となった。