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Alexandr Sherstobitov/Getty Images

米アップルがヘッドセット向けの視力矯正システムに関する特許を出願したことが明らかになった。普段使っているめがねなどのアイウェアなしでMR(複合現実)コンテンツを楽しめるようにする技術だが、アイウェアの小売りビジネスのあり方も揺さぶることになりそうだ。

アップルの最新の知的財産を分析するブログサイト「パテントリー・アップル」によると、米特許商標庁がアップルの出願した特許2件を公開した。特許の内容は「ユーザーのアイウェアの処方箋をシステムに組み込んだ、新しい強力な視力矯正光学システム。レンズを調整して、乱視や遠視、近視といった視力問題に対処する」ものだという。

平たく言えば、この装置によって視力を電子的に矯正できるということだ。これがあれば視力の状態を電子的に検知できるため、商品化されれば、従来のように検眼士に処方箋を出してもらう必要もなくなるだろう。

この装置はすぐには商品化されないし、もしかすると永遠に商品化されないかもしれない。実際、出願してそれきりになる特許も多い。

だが、この装置が今後どうなるかとは別に、今回の出願がもたらす影響は非常に大きいと言える。なぜならそれは、アイウェアの処方箋を得るのに必要な屈折力検査を不要にする方向へテクノロジーが進んでいることを示す動きだからだ。この技術が開発されれば、店舗に行って視力測定を受け、処方箋を発行してもらい、めがねなどを購入するというプロセス全体が根本的に変わることになるだろう。

実際、こうした技術に取り組んでいるのはアップルだけではない。ヴィジブリー(Visibly)社は、コンピューターとモバイル機器を用いて処方箋を更新できるシステムを開発し、米食品医薬品局(FDA)の認可をめざしている。アイキュー(EyeQue)という会社も、自宅で視力の状態を検知できる機器の発売を予定する。このほか、目の検査を遠隔でしやすくする「TESA」というスマートフォン用アプリも開発中だ。

要するに、アップルが製品化するかどうかはそれほど問題ではなく、めがね類の処方や販売の仕方を変えるようなテクノロジーの開発が進んでいるという点が大事なのだ。そのテクノロジーは、アイウェアに関わる既存のインフラや、処方箋を出してめがねを売るためにある多くのめがね店を脅かすことになるだろう。

アップルの関心と特許出願は、大手テック企業がこの分野に注目し、その圧倒的なリソースと技術力でアイウェアビジネスに殴り込みをかけ、めがね類の売り方を根底から覆す可能性が十分にあるということだ。これは、今日めがねビジネスに携わっている人すべて、とくに実店舗をもつ小売業者にとって、きわめて大きな脅威になる。

従来のビジネスモデルがテクノロジーの挑戦を受けている多くの業界の例に漏れず、既存のめがね業界も変化と戦っている。たとえば業界側は、消費者のめがねの購入にあたって処方箋が不要になれば、視力検査を通じて予防できている多くの眼病が発見できなくなると警鐘を鳴らしている。今後も消費者がこうした目の検査を受けられるようにする必要があるのは、たしかにその通りだろう。

とはいえ、ここでの大きな問題は、テクノロジーがもたらす変化との戦いには勝ちめがないということだ。変化にあらがう伝統的なアイウェア企業も、テクノロジーが消費者に約束する便利さの前に敗れ去ることになるだろう。これは、これまで何度も繰り返されてきたパターンだ。変わることをいとわない者しか、適応して生き延びることはできないのだ。

編集=江戸伸禎

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