「不妊治療のバーチャル化」はコロナ後も続く見込み

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ここ数か月のあいだ、不妊治療を受けている人たちの人生設計は一時停止の状態にあった。クリニックや医師に対して、新たな通知があるまですべての治療を中止するように勧告が出され、専門家たちは従わざるを得なかったからだ。一般の人々に対しても、新型コロナウイルスに感染する可能性が高い医療現場に出向くことは可能なかぎり避けるべきだとのアドバイスがなされていた。

それでも不妊治療を望む人たちは、パンデミックのずっと前から、治療を受けたいとして待っていた人たちだ。コロナ危機のあいだに診療予約と治療のあり方は変化しており、専門家はこの変化が永続的なものになるかもしれないと考えている。

米国生殖医学会は4月24日、新型コロナウイルス感染拡大防止のための重要手順を遵守することを条件に、不妊治療クリニックの再開を認める方針を発表した。この発表まで、多くの治療がパンデミックによって中断していた。

米疾病管理予防センター(CDC)によると、米国では、出産可能年齢の女性のうち730万人が不妊治療を利用しており、これには高額の費用がかかる。ロックダウン(都市封鎖)が続くなか、自宅での検査やビデオ検診が一般化した。クリニックの再開は正常化への第一歩に見えるが、新型コロナウイルスに対する患者の不安を和らげるためには、多くの対策を実施する必要があるという意見もある。

プロゲステロン(黄体ホルモン)検査キットの販売で初のFDA認可を受けたプルーヴ(Proov)の創業者、エイミー・ベックリー(Amy Beckley)は、「生殖内分泌学の専門家のオフィスで診療を受ければ、バーチャルケアよりもずっと高額な費用が必要になります。バーチャルケアははるかに費用対効果が高く、利用しやすく、効率的です」と語る。「現時点では、オフィスを訪ねなくても、医師からバーチャルに検査結果を聞ける方が、安全で不安の少ない方法だといえます」

アドバイスや投薬、検査のために臨床医を訪問する代わりに、患者たちは、インターネット上のフォーラムやビデオ相談を利用する必要に迫られた。ベックリーによれば、不妊治療を受けている人々には、「自宅で使える優秀な精子検査キットがありますし、排卵のモニタリングも可能です。不妊のおもな原因はこの2つです。どちらかに問題があるとわかれば、医師に連絡してバーチャル診療を受けられます。クリニックを実際に訪れなくても、妊娠に成功する見込みは大いにあるのです」と説明する。

エコノミスト紙によると、世界中で何千万件もの手術や処置が延期されたため、遅れを取り戻すには数か月を要する見込みだ。

体外受精(IVF)や不妊治療のバーチャルケアへの移行により、多くの患者たちは否応なく、自宅での検査やビデオ相談に適応することになった。これにより、一部の人々の不妊治療はロックダウン中でも進展したが、自宅で行うことができない治療法もある。クリニックはこれから数カ月のあいだ、危機のあいだに済んでいるはずだった処置を進めることに追われるだろう。

クリニックは治療の予約を再開し始めているが、ロックダウン中に進んだ「バーチャルへの移行」は今後も長く続きそうだ。

翻訳=的場知之/ガリレオ

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