教育を守り、医療を支える コロナ禍で活躍したセンスタイムのAI技術

AI診断支援アプリケーション Sense Care 肺ソリューション

AI技術、特に顔認証の分野で世界から注目を集めているユニコーン企業「SenseTime (センスタイム)」。アジア最大のAIアルゴリズムのプロバイダーである彼らの技術は、教育、ヘルスケア、スマートシティ、自動車、通信、エンタテインメントなどあらゆる領域で活用されている。

センスタイムは、2014年に香港で創業。現在スタッフ数は4000名を越え、中国9都市や日本、シンガポールにも進出。多額の資金調達にも成功しており、現在の評価額は70億ドルを超える。

新型コロナウイルスのパンデミックにおいては、特に早期に感染が拡大した中国において、同社の技術やサービスが活躍した。今回はその詳細を振り返ってみたい。

いち早くAI教育の無料提供開始


新型コロナウイルスの感染拡大により学校での授業が中断されているなか、センスタイムは、初等教育から中等教育、さらにAIを専攻する大学生に至るまでをサポートする無料のオンラインAI教育プログラムを、2月から中国全土で開始した。

センスタイムは以前からAI教育の普及には注力しており、2020年度の前期までで、中国全土の11都市500の小中学校から、10万人の生徒がAIカリキュラムに参加しているという実績もあった。

学校閉鎖の期間中は、教育機関や学校はオンラインシステムを通じて、SenseStudy AI Experimental Platformに無料でアクセスすることができた。このプラットフォームは、生徒がAI理論を実践したりプログラミングを練習したり、教師がクラスをつくったり宿題を割り当てたり生徒に助言を与えたりするためのインタラクティブな空間だ。

プラットフォームには、AIインストラクターを目指す教師向けの無料のトレーニングコースもあり、AI開発からアプリケーションやアルゴリズムまでのコースを、すべて自治体のクラウドプラットフォームから利用できる。使用される教材は、初等教育から中等教育までのレベルごとに整理されており、利用者はニーズと能力に合ったレベルから始められる。

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オンラインプログラム SenseStudy AI Experimental Platform

さらに、センスタイムはAIを専攻する学者や大学生の、知識共有やコミュニケーションを支援するプラットフォームとツールである 「Titan Open Courses」 を立ち上げた。これでユーザーは最新のAI研究開発を学ぶことができ、この分野の専門家とも話す機会を得られる。

ほかにも、利用者がリアルタイムで議論できるライブストリーミングのレッスンを無料で提供したり、オンラインで検証テストを実施する場を提供したり。AI、機械学習、ロボット工学の基本を教える人気の科学ビデオシリーズも無料公開され、これらのビデオはさまざまな他社のオンラインサービスで閲覧することができる。
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文=藤井 薫

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