『ビジョナリー・カンパニー』著者 ジム・コリンズの素顔

ジム・コリンズ

『ビジョナリー・カンパニー』シリーズが累計1000万部を売り上げている世界的作家、ジム・コリンズ。徹底したデータ主義と歴史学的なアプローチにもとづく言説は、25の言語に翻訳され、時代を超えて支持を集めてきた。コリンズのこれまでの功績と素顔に迫る。

ジム・コリンズの経歴


1958年、アメリカのコロラド州で生まれたジム・コリンズ。スタンフォード大学で数理科学の学士号を取得したのち、同大学にて経営学修士号を取得した。卒業後は「マッキンゼー・アンド・カンパニー」で18ヶ月間コンサルタントとして働き、その後、「ヒューレット・パッカード」でプロダクトマネージャーとなった。

コリンズが研究と教育の仕事を始めたのは、スタンフォード大学経営大学院だ。92年には最優秀教員賞を受賞。95年、コリンズはコロラド州ボルダーにマネジメント研究所を設立し、現在は企業や社会セクターの幹部の指導を行っている。

『ビジョナリー・カンパニー』の誕生


コリンズが世に知られるきっかけとなったのは、94年に出版された『ビジョナリー・カンパニー』だ。世界最大のアメリカの総合電機メーカーであり、多国籍コングロマリット企業「GE(ゼネラル・エレクトリック)」出身の、スタンフォード大学教授ジェリー・I・ポラスと共に書いたこのビジネス書は、5年連続で全米ベストセラーを記録した。

『ビジョナリー・カンパニー』誕生のきっかけは、スタンフォード大学経営大学院に在籍していた30歳の時にあった。

ウィリアム・ラジアー教授からMBAプログラムの「ビジネス352」という講義を預かったコリンズは、前年度のシラバスに書いてあった「本講義では、小規模事業、及びベンチャー企業の立ち上げについて学ぶ」という文章を「本講義では、ベンチャー企業や小規模事業を永続的で偉大な企業に育てる方法を学ぶ」と書き換えた。

「小さな会社がどのようにして大企業に成長したのか。そうなれなかった競合との違いは何か。これは『起業家の問い』だと思った」。

そう語ったコリンズは、ベンチャー企業がどのような道筋をたどって偉大な企業になるのかを探求した。そして、その秘密を丁寧な調査と分析で解き明かした結果、生まれたのが『ビジョナリー・カンパニー』シリーズだ。

ジム・コリンズが語る起業家像


88年、コリンズは、スティーブ・ジョブズに「学生たちに起業体験を伝えてほしい」と招請した。「アップル」を追放されて数年、立ち上げた「NeXT」の経営は順風満帆とは言い難かったが、ジョブズは快諾。

翌年冬、スタンフォード大学の学生たちを前に「人類の精神を拡張するような製品をいかに美しくデザインできるか?」というビジョンを語った。

ジョブズはそのときすでに、コリンズが著書で紹介した「ハリネズミの概念」を見つけていたのだ。

これは、1. 情熱をもって取り組めるもの、2. 自社が世界一になれるもの、3. 経済的競争力を強化するもの、という3つの自問の答えを円にしたとき、重なる部分こそ注力すべき分野(ハリネズミの唯一の武器であるトゲのような強み)のことだ。

コリンズは現在も著書や講演で若き起業家たちに、創業者が会社を育て上げる強い意志を持つことの重要性を伝え続けている。

文=谷村光二 写真=ジョン・ローズ

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