Grindr、米国当局からの懸念を受けて中国企業が株売却

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2020年3月、世界最大のLGBTソーシャルアプリのひとつ「Grindr(グラインダー)」を運営する中国企業「北京崑崙万維科技(Beijing Kunlun Tech)」は、6億ドルを超える金額で、このプラットフォームを売却した。アメリカ当局が同プラットフォームについて、情報の安全性に大きな懸念を表明してから1年後のことだ。

中国がテクノロジー企業を通じてセンシティブなデータを取得し、アメリカ国民に不利になるかたちでそれを利用する恐れがあるという、アメリカ当局の要求を受けて売却されたのだ。ここで疑問が生じる。マッチング系アプリが国の安全を脅かすことは、実際にあり得るのだろうか。

背景


Grindrは、デイリーアクティブユーザー数が300万人を超えるマッチング系アプリとして、大量のソーシャルデータを有している。同プラットフォームの個人情報保護に関する方針には、「さまざまな個人情報を収集している」という但し書きがある。その中身は、位置情報からメッセージ、さらにユーザーが公表することを選択している場合にはHIV(ヒト免疫不全ウイルス)の感染状況に至るまで幅広い。

なかでも情報がさらされている集団はおそらく、黒人ゲイとバイセクシュアル男性だ。というのも、2017年にHIVと診断された人の数は、黒人ゲイとバイセクシュアル男性がもっとも多く9807人だったことが、アメリカ疾病管理予防センター(CDC)のデータでわかっているからだ。次に多いのがヒスパニック系で7436人、白人が6982人でそれに続いている。

また、安全保障上の観点から対米投資を審査する「対米外国投資委員会(CFIUS)」は、Grindrのユーザーには米当局者や米軍関係者が含まれている可能性があるとして懸念を示していた。

ビジネスニュースサイト「カルチャーバンクス(CultureBanx)」の指摘によれば、CFIUSにとって最大の問題は、Grindrがデータ保護に関する法律に違反していたことだ。CFIUSは、Grindrがユーザーから適切な同意を得ずに、性的嗜好やHIV感染状況に関する情報を第三者に渡していたと指摘。2019年3月には、北京崑崙万維科技に対してGrindrを売却するよう求めていた。
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翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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