ライフスタイル

2020.04.05 16:00

折り紙、その奥深き世界。鶴から悪魔、宇宙、認知まで

折り紙を折る安宅雄一さん

話を聞いたらいろいろ出てきそう。なんだかほじりがいがありそうだ。ABEJAには、そう思わせる人たちがいます。何が好きで、どんなことが大事だと思っているのか。そんなことを聞き書きしていきます。

今回は安宅雄一さん。週1度開かれている社内勉強会「ABECON」(アベコン)で、折り紙について話してくれたことがあります。歴史、技法、宇宙に行った話、果ては人の感性まで。その奥深さといったら……!

安宅さんにいざなわれ、折り紙の世界をのぞかせてもらいました。自作の折り紙も見ものです。


僕は折り紙が好きです。いつも小さな折り紙を持ち歩いていて、電車の中で折っています。どうやって? 前を向いて視線を落とさず、指だけ動かして作るんです。

もともと家で一人で何かをするのが好きな子どもで、紙飛行機とかひとりあやとりとか、母のビーズワークや編み物なんかもしてました。

折り紙にはまり込んだのは、中学生の時から。3年生のときだったかな、教室の後ろの壁に学級文庫があって、なぜか折り紙の本も並んでて。本をめくったら「足つき三方」が紹介されてました。これです。見たことないですか。

折り紙 ABEJA
足つき三方(右)と犬にアレンジされた足つき三方
制作者 安宅 雄一
創作者 不明

その本では足つき三方をアレンジして、箱の横を犬のかたちにしてました。知っている作品でも、見方を変えるとこんなこともできるんだ、といたく感心したのを覚えています。本屋で買ってきた折り紙の本をめくり始め、難しめのクジャクや三頭の鶴などを作るようになりました。

折り紙 ABEJA
作品名 三ツ首の鶴(左)、孔雀
制作者 安宅 雄一 創作者 前川 淳

高校生になると、授業中に折るようになりました。せっせと手を動かして、できあがったら窓枠や机の端っこに並べる。少し飾ったら教室のごみ箱に捨てました。手を動かしてると心が落ち着くんです。1日の授業の半分くらい折っている日もありました。友達にも先生にも、安宅と言えば「折ってるヤツ」と見てもらえるようになりました。さすがに古典の先生は怖かったからやらなかったけど。

理系クラスの人と放課後、折り紙を折る自主活動もしました。理系クラスの生徒の中には幾何学的な図形が好きな人がいて、ピラミッド型の四角すいや立方体、薔薇といった立体的な折り紙に心ひかれてたみたいです。

ちなみに妻は高校の同級生で、当時教室でひたすら折り紙をしていた僕の姿を知っています。2018年に結婚したんですが、一緒に折り紙ブーケをつくって結婚式会場の入口のウェルカムボードのあたりに飾りました。今も自宅にあります。

折り紙 ABEJA
安宅さんと妻が結婚式に向けて一緒に折った折り紙のブーケ=安宅さん提供

大学生になると、有名な折り紙作家の作品集を買ってさらに難しいものを折るようになっていきました。たとえば、神谷哲史さんの作品集とか。

折り紙 ABEJA
神谷哲史を始めとする作品集の数々=安宅さん提供

「日本折紙学会」の会員になったのもこのころです。毎年各地で学会が開かれていて、折り紙の講習会が開かれたり設計理論が発表されたりします。「研究者」から「草折り紙」まですそ野はうんと広い。懇親会でも折り紙を持ち寄ってこんな作品があるんだ、と折り始める。さしずめ将棋の感想戦みたいな風景です。即興で折る企画や片手で折る大会なんていうのもある。無口な人が多いんですが、折り紙の話になると尽きないし、とにかくただただ折っている。不思議な世界です。
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取材・文=錦光山雅子 編集=川崎絵美 写真=川しまゆうこ

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