コムキャスト傘下のNBCユニバーサルは現在、本来は劇場で先行上映するはずだった最新映画をストリーミングで公開し、テーマパークを閉鎖している。同社が7月に立ち上げ予定のストリーミング「ピーコック」は、五輪中継を起爆剤に見込んでいたが、その目論見も崩れた形だ。
さらに、カリフォルニアやニューヨークなどで人々の移動が制限された結果、同社のコンテンツ制作も中断せざるを得ない状況だ。2018年にコムキャストが買収したイギリスの放送局「スカイ」も、英国が3週間のロックダウンを実施中のため、厳しい状況に置かれている。
「現時点では、広告を含む当社の製品やサービスがどの程度の影響を受けるかを予測するのは、非常に困難だ」とコムキャストは述べた。
NBCユニバーサルは3月初めの時点で、12億5000万ドル(約1400億円)相当のオリンピック関連広告を販売していた。同社は、五輪の延期が及ぼす影響を最小限にとどめるための施策を、広告主らと協議中という。
株価の低下によりコムキャストは先月、時価総額の20%を失った。しかし、これは競合のディズニーよりはましな数字だ。コムキャストの売上の大半は、NBCユニバーサルやスカイではなく、ケーブル事業からもたらされている。しかし、今後は消費者や企業の予算の引き締めにより、ケーブル部門でも苦戦が予想される。
ピーコックは、4月にベータ版を立ち上げた後、7月に本格始動する予定で、自宅にこもりがちな人々の支持を集めそうだ。期待された五輪中継はキャンセルになったが、NBCユニバーサルは「ロー・アンド・オーダー」や「サタデー・ナイト・ライブ」などの人気コンテンツを豊富に用意できる。
さらに、競合のDisney+やHBO Maxが有料コースのみであるのに対し、ピーコックには広告つき無料版もある点がアドバンテージといえる。
NBCユニバーサルの広報担当は声明で、IOCらが東京五輪の開催を2021年に延期したことを全面的に支持すると述べた。「当社はIOCと東京組織委員会が来年、例外的な大会を開催し、オリンピックの炎で再び世界を一つにし、トンネルの先に光を灯すことを信じている」と広報担当は続けた。