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2020.03.19 21:00

3組に1組は離婚する時代。話し合って決める「婚前契約」のすすめ

PhotoAlto/Frederic Cirou/ Getty Images


婚前契約はプラスに活用できる


とはいえ、先述したとおり、日本において婚前契約は一般的ではありません。これには「結婚する前から離婚することを想定する難しさ」があるでしょう。さらには「離婚すること前提で結婚するなどありえない」という理由もあるでしょう。
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もっと現実的に言えば、「財産分与の金額を減額するためと思われるのでは」とか「ケチと思われてしまうのでは」という不安もあるかと思います。ですが、けっしてそうではありません。

婚前契約は、夫婦にとってプラスに活用できるものなのです。婚姻届の提出前、契約について考えることで、結婚後に自分たちはどのような夫婦となるのか、どのような家庭を築いていくのかの擦り合わせができるのです。家庭内でのルールを結婚前に話し合うことができるのです。

一般的に、夫婦は、愛情の高まりのまま勢いで結婚し、生活をともにしていくなかで、「こんなはずじゃなかった」と不満を溜めて離婚に至る。離婚する夫婦においては、そういったケースが大半です。
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そうではなく、事前に金銭感覚や、異性や互いの友人との付き合い方、お酒の頻度や趣味に費やす時間や予算についてなど、籍を入れる前に冷静になって話し合うだけでも、たいへん意義があることではないでしょうか。

たとえば、「浮気は絶対にしない。万が一の場合には罰金を◯万円払います」など、話し合った事柄を「覚書」としてまとめておく。法的な拘束力はなくても、ふたりの「目線」を結婚前に合わせておくことで、その後の結婚生活に良い影響を及ぼすのではないかと思います。

上場をめざしている起業家や経営者の方なら、この一連の話し合いのなかで、自社株を財産分与の対象から外すことを合意しておく。

「このままでは、突然、離婚した場合、あなたが大株主になってしまう。公開企業としてこれでは責任を全うしているとは言えないから、そこは理解してほしい。その代わり、けっして後悔させないように大事にする」

このくらいのことは、話し合っておきたいものです。けっして結婚前に話し合っても違和感のあるものではないでしょう。こういった事前の話し合いと擦り合わせがもっと頻繁に行われれば、日本での離婚の件数も減っていくかもしれないとさえ思います。

婚前に契約書をつくる際には、弁護士の力を借りるとよいでしょう。ひと口に弁護士と言っても専門分野は各々異なります。企業問題に強い弁護士、刑事事件に強い弁護士、労働問題や相続に強い弁護士など、それぞれ専門性が分かれています。

ことに、婚前契約となると、日本でもまだ例が少なく、実際に手がけた経験のある弁護士はそれほど多くはありません。なので、離婚や家庭問題に強い弁護士に頼むのがよいかと思います。この手の問題に強い弁護士なら、実際に手がけたことはなくとも婚前契約にまつわる知識は持っています。

依頼する際の料金ですが、これも弁護士によって、また財産の額や扱う契約書の中身によって異なります。初回は無料で相談に乗ってくれる弁護士もいますので、一度、実際に訪れてみて、最終的にいくらになりそうか、直接聞いてみると大まかな金額を教えてくれるはずです。

夫婦は一心同体とも言えるパートナーです。パートナーを大切に思うからこそ、将来のリスクについて、結婚前にしっかりと話し合い、擦り合わせをしておくことが大切ではないかと思います。

さらに、起業家や経営者ともなれば、家庭だけではなく社会に及ぼす影響も企業の規模に比例して増大していきます。意義ある事業を展開していくならなおさら、将来に万全の備えをしておく必要があるでしょう。

文=元榮太一郎

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