世界的に都市化が進み、動物から人への感染の可能性も増していることから、おそらくこの新型コロナウイルスが、最後のコロナウイルスとなることなどないでしょう。こうして今後のリスクがさらに顕在化しているにもかかわらず、コロナウイルスに対する現在承認済みの診断薬や治療薬、ワクチンはありません。
これにはさまざまな理由が考えられますが、主なものとしては、ウイルスの血清型がそれぞれで違うため、診断薬、治療薬、ワクチンも異なるものが要求されることが挙げられます。
一般に1つの薬を開発するには、平均15年以上かかり、かつ治験の成果によっては約700億円から3000億円以上の資金が必要であると言われています(*1,2,3)。
今回の新型コロナウイルスのような突発的な流行が起こるウイルスは、予測不能なマーケットであり、またビジネスとしての持続可能性が低いことから、企業がこれらに対して新薬の開発投資に踏み切れないというジレンマを持つのは、容易に想像できるかと思います。
では、政府や学術機関がこのような技術を開発すればよいのではと思われるかもしれませんが、民間企業の支援なくしては、開発は非常に困難であると言っても過言ではありません。
SARSやMERSの試練を生かして
とはいえ、私は悲観的ではなく、むしろ楽観的な見立てもしています。
この困難な状況のなかでも、私たちはグローバルコミュニティとして、患者、医師、公衆衛生の担当者が必要とするイノベーションの開発に向け、とるべき道を進んでいると確信しています。
どうしてこれほど希望をもって考えることができるか。それは、国境や専門領域を越えた提携のノウハウが蓄積してきたことや、製薬会社がバイオテクノロジー企業、学術機関、政府と提携する能力が高まってきているからです。