感染拡大を食い止めるため、中国では出入国と国内での移動が制限されている。小売店は閉鎖が相次いでおり、営業している店舗でも来店客が激減している。
中国本土に(マイケルコースなど)約250店舗を展開する米ファッションブランド持ち株会社のカプリ・ホールディングスは、150店舗近くを閉鎖。ラルフローレンは、115店舗のおよそ半数で営業を見合わせている。アディダスは1万2000ほどある店舗の”相当数”を、一時閉鎖する方針だ。
予想される大打撃
米金融サービス会社コーウェン・アンド・カンパニーのアナリスト、オリバー・チェンは、およそ14兆3000億ドル(約1570兆円)に達する中国のGDP(国内総生産)からみて、最も深刻な影響を受けるのは高級ブランドだと指摘している。
高級ブランド各社が売上高の平均14%を中国市場に依存しているためだ。その割合は、LVMHとティファニーが17%、リシュモンが11%、(コーチなどを傘下に持つ)タペストリー、カナダグースがいずれも10%、カプリ・ホールディングスが6%などとなっている。
高級ブランドのECサイト「ファーフェッチ」もまた、事業に占める中国市場の割合が28%となっており、同国への依存度が高い。電子商取引がビジネスの主体であるため、店舗販売が中心の各社より影響は小さいとの見方もあるが、コンサルティング会社カーニー(旧社名ATカーニー)のデジタルサプライチェーン部門のパートナー、スーケトゥ・ガンジーは、同様に悪影響を受けるとみている。商品の配達に必要な人員の確保が困難になっていることが理由だ。
ブランド各社の見方
それでも、高級ブランド各社は今のところ、慎重ながらも楽観的な姿勢を維持している。最悪の時期は、今年半ばには脱することができると見込んでいるためだ。ただ、2020年会計年度の売上高が当初予想より約1億ドル減少するとの見通しを示したカプリ・ホールディングスのジョン・アイドル最高経営責任者(CEO)は、「中国の状況が大幅に悪化すれば、この見通しは大きく変わることになる」と警戒感を示している。