中国は、ここ数カ月にわたり続けてきた景気刺激策に加え、米国と第1段階の貿易合意に至ったことで、貿易戦争の影響を乗り切ってきた。だが、今回の新型ウイルスが2003年の重症急性呼吸器症候群(SARS)流行に匹敵する危機となれば、その一時しのぎの効力は弱まるだろう。
中国の2019年経済成長率は6%を下回ると予想されていたが、実際には6.2%前後になる見通しだ。中国の株式市場は、新型ウイルスのニュースが米国のトランプ弾劾裁判と同様の注目を集めるようになった先週以降は後退傾向にある。
米株式市場もまた、数週間にわたる上昇が続いた後、現在は下落している。クオンツファンドのアルゴリズムが「アウトブレーク」や「コロナウイルス」といったキーワードに反応し、旅行・交通関連株の大量売りを引き起こしていることを示唆する情報もある。
エコノミスト誌の調査部門「エコノミスト・インテリジェンス・ユニット」で世界経済予測の責任者を務めるアガット・ドマレは、新型コロナウイルスがSARS流行のような問題に発展すれば、中国の2020年経済成長率は0.5ポイント下がり、公式成長率が史上初めて5.5%を下回る可能性があると指摘している。
バークレイズは24日に送付した顧客向けメモで、新型ウイルスの感染者がSARS流行を超える可能性があると指摘。感染拡大の中心地となっている武漢からは、移動制限措置が導入された今月23日までの2週間弱で400万~500万人が既に市外へと出ていた可能性があると見積もっている。
新型ウイルス問題を受け、ファンド運用会社の多く(特にクオンツファンド)は売りに走るだろう。ダウ平均株価はここ最近3万ドルに近づいていたが、現在は再び2万9000ドルを割っている。
新型ウイルス発生前、中国経済はすこぶる好調だった。中国の経済成長率が1ポイント低下した場合、2020年の世界経済成長率は約2ポイント下がると予想されている。