激化するインドの就活事情
同じクラスのインド人の学生にも聞いてみた。インドの場合は多くの大学が就活エージェントのような働きをするらしく、大学が企業と提携していることが多い。学生は大学を通して面接日程を組むことができるそうだ。
「大学のおかげで少しは便利かもしれないけど、内定をもらえるのは、ほんの一部の優秀層だけだよ。企業側も優秀な学生を採用するのに必死なんだ。例えば、いい学生を見つけたら、最低5年間働くことを条件に内定を出す企業も多い」
さらに続けた。「公務員や政府機関での安定的な仕事は、低いカーストの学生への配慮として、ほとんどの枠が彼らに割り当てられてしまう。頭のいい中間層の学生は公務員になりたくてもなれないんだ──」。こう語った彼のプランは、インド以外の国で数年キャリアを築き、自信をつけた後に、インドに戻って事業を始めるとのことだ。
インドではみんな、生き残るために力をつけようと必死なようだ。インド人の個々の能力が高い理由はここにあるかもしれない、と思った。
就活を考える際には選択肢を見直す
就職活動を後回しにしながらも勉強は疎かにしないイタリア人、国内での競争の激しさや制度を考慮し現実的に行動するインド人、世界には様々な「就活スタイル」があるようだ。
ドイツやフランスでも、卒業前に必ずインターンをして、就職活動の決着をつけようとする学生は多いというが、卒業前という期間内に仕事が見つからなくても、特に問題はないそうだ。日本の「就活浪人」のように、タブー視する傾向はほとんどなさそうだ。
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筆者は4回の留学のおかげで、世界中の若者と「今後」の話をする機会がたくさんあった。その度に彼らの自由なマインドや、若き日々を有意義に生きようという姿勢に新鮮さを感じていた。
世間で高く評価される企業から内定をもらうために自身を磨くよりも、自分の下した選択に満足して1人で生きていける力を身につけることが大切なのでは、と彼らの話を聞いて思った。
そういう意味で、内定を卒業前にもらえなかった就職浪人とは異なる「自分と向き合う時間を設けたい就活浪人」を肯定したい。
世界には、ヨーロッパの友人たちのように、良くも悪くも焦って就職活動をする学生は少ないようだ。「だから日本も」と無理やり当てはめる気はないが、就職活動について考える際は、進学や起業など、就職以外の選択肢も積極的に視野に入れてもいいと思う。
少なくとも私のクラスには、就職活動のために大学生活を送っている学生は1人もいない。勉強に励みながら学生生活を楽しむ時期、自分と向き合う時期、そして残りの長い人生の基盤となる「働き方」を模索する時期、これらの時期を焦らず一つずつ迎えていくことで「真に納得できる就活」ができるのではないだろうか、と彼らから学んだ。