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マリオ・タマによる実際の写真はトランプの第45代アメリカ大統領就任翌日の反トランプの集まりを写していた(Photo by Mario Tama/Getty Images)

エイブラハム・リンカーン元米大統領はかつて、「歴史は真実でない限り、歴史ではない」と語った。これは米国立公文書記録管理局(NARA)がつい先日、苦い経験を通して学んだ教訓だ。

米紙ワシントン・ポストは先週、首都ワシントンで2017年に行われた女性主導のデモ行進「ウィメンズ・マーチ」の写真をNARAが修正し、トランプ大統領を批判するプラカードにぼかしを入れた上で展示していると報じた。この衝撃的な報道を受けて批判の的となったNARAはツイッターで、「私たちは間違いを犯した」と表明。問題の展示は既に撤去しており、無修正の写真を使ったものに置き換えると発表した。

問題の写真は、米国で女性に参政権が与えられてから100周年を記念する展示の入り口に置かれていた。改ざんされた写真は、ゲッティイメージズのカメラマン、マリオ・タマが2017年1月21日に行われたウィメンズ・マーチを撮影したもので、首都ワシントンに集まった反トランプ派の人々が写されている。

参加者らは連邦議会議事堂を背後に、「神はトランプを嫌っている」「トランプと共和党は女性から手を離せ」などと書かれたプラカードを掲げていたが、修正後の写真では「トランプ」の文字にぼかしが入れられていた。

NARAは米国独立宣言書や憲法、権利章典などを保管していることで知られ、米国史の保護機関として透明性と正確性を保つことが求められている。報道を受け、歴史家やジャーナリストは即座に反発。ライス大学の歴史学者ダグラス・ブリンクリーはワシントン・ポスト紙に対し「国立公文書記録管理局が歴史的な写真をデジタルな方法で修正すべき理由はない」と指摘し、「特定の画像を使いたくなければ、それは使わなければよい。しかし、一般市民を混乱させることは非難に値する」と述べた。

皮肉にも、NARAは写真修正の決断について、政治論争に巻き込まれるのを避けるためだったと弁明している。同局の広報担当者はワシントン・ポスト紙に対し、「無党派で非政治的な連邦政府機関として、私たちは現在の政治的な議論に巻き込まれないよう、一部のポスターで大統領の名前をぼかした」と説明。「画像を修正することは、記録に焦点が当たるようにするための私たちなりの試みだった」と述べた。

しかしNARAは結果的に、そうすることで焦点を真実からそらしてしまった。

編集=遠藤宗生

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