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身近で「リアル」な課題を共有し、最新のデジタル・プラットホームで解決へと結びつける。市民、企業、官公庁、大学・研究機関。すべてが協働して地域の課題に挑む、究極のロールモデルが横浜にあった。

「人暮らしの高齢者が増えている」「空き家・空き店舗が増加している」—。

 住民たちが抱える不安や課題に対し、地域の中から知恵と人材と資金が集まり、解決していく。そんな「本当に?」と疑いたくなる、夢のような仕組みがある。昨年10月下旬に正式にローンチされたウェブサイト「LOCAL GOOD YOKOHAMA」(ローカルグッドヨコハマ、以下LGY)だ。

 仕掛け人は、2003年にNPO法人「横浜コミュニティデザイン・ラボ」を設立し、本拠地を関内の年代物のビルの一室に構える杉浦裕樹である。ここに、杉浦の考えに賛同したコンサルティング大手のアクセンチュアのCSRチームが加わり、実現した。

 LGYの仕組みはこうだ。
 たとえば、市民や団体・企業が感じている地域の課題。これをスマートフォンアプリやtwitterなどを利用して投稿すると、それぞれがGoogleEarth上に自動表示(首都大学東京の渡邉英徳准教授が監修)される。家族機能のスリム化、生産年齢人口の減少など、横浜の社会課題に関連するデータもインフォグラフィックスや、データビジュアライゼーションと呼ばれるウェブ上のプログラムを使って見える化している。これは、横浜市政策局の協力により、市がもつ統計データやオープンデータを活用したものだ。また、地域課題解決に尽力する人たちのインタビューやニュースを伝えるメディア機能も担う。これにより地域の課題と、課題を解決する人を可視化する役割を果たしているのだ。

 さらに「クラウドファンディング」による資金調達機能も装備。市民の地域参加を促している。
 実際にクラウドファンディングで、支援が成立し、資金を得たプロジェクトのひとつに「バイターン実施プロジェクト」(NPO法人パノラマ)がある。「バイターン」とは、バイトとインターンからなる造語で、「中間的就労」モデルのこと。現在、毎年5万人の若者が、経済的格差を背景に、高校卒業後就職することができない状況にあるという。こうした状況を解決するため、就職希望の生徒と新規受け入れ企業のマッチングを行い、若年無業の状態に陥る人を減らそうというのが本プロジェクトだ。取り組みを続けるため、LGYのクラウドファンディングに挑戦。無事に目標額に達し、活動を継続。一定の成果をあげている。

 このように、LGYは、「リアル」な課題に対して、解決策をもつ市民や団体・企業を、「デジタル」のプラットホーム上でマッチングし、解決まで結びつかせることを可能にしているのだ。地域を自分たちごと化する「中間領域」の必要性

 「取り組みの基準となるのは、地域や社会にとって“Good”であるかどうか」と、杉浦裕樹は語る。「少子高齢化が進み、社会的なコストは上昇していく。この多様化した社会においては、すべてを公共にまかせても立ちゆかない時代。都市の公益を持続するには、市民一人ひとりが地域のことを“自分たちごと”と捉え、各人が地域をよくする活動に参加・参画することが求められています。そうすることで、自ずとシビックプライドを醸成することもできます。しかし突然、地域を“自分たちごと化”してくれと言っても、なかなか難しい。だから、横浜コミュニティデザイン・ラボでは、すでに何か行っている人の想いに共感しつながることで、活動がデザインされていくようプラットホームをつくり、それぞれのリソースをマネージしているのです」

 市民、NPOなどの団体のみならず、行政やアクセンチュアのような大企業から地域の中小企業まで幅広く巻き込み、LGYはじめ、さまざまなアクションにつなげている横浜コミュニティデザイン・ラボ。

 内閣官房で地域活性化にかかわってきた経験がある慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科の早田吉伸は、「僕がコミュニティデザインにかかわるなら、横浜の手法を真似します。地域活動に必須の仕掛けが、美しいくらい揃っている」と評する。
 その言葉通り、ここには地域の面白い人物や価値ある情報に接触・収集し、発信できるメディアがある。またさまざまな人が集まる「さくらワークス」という場を有する。それにより、勉強会やワークショップ、ファブラボなどのアクションを起こし、多くの人を引き寄せているのだ。

 しかし、それだけではない。何よりも興味深いのは、人々がここでは“肩書を外し”、あくまでも一個人として参加していることだ。それにより、この場が、 “中間領域”の役割を担い、まずは個人対個人として活発に議論し、ソリューションを生み出す場となっている。

 ある週末、政策勉強会が開かれたかと思えば、オープンデータ活用のためのハッカソン(ソフトウェア開発者が技術とアイデアを競うイベント)が開催され、その横ではものづくりをする人たちがファブラボを利用。さらにその傍らで、味噌づくり教室が開かれていたりする。訪れるのは、クリエイター、地元の中小企業経営者、市議会議員、地域の行政担当者、会社員、主婦、学生などさまざま。彼らは用意されたテーマにただ集うのではなく、時には自らが仕掛け人となり、この場を利用している。

 早田は言う。「イノベーションは多様性から生まれます。何と何が合わさるか。新しいテーマとテーマ、ある分野と分野の結合が不可欠なのです」

 そうだとするならば、横浜コミュニティデザイン・ラボこそ、まさに地域イノベーションの場だといえるだろう。

(全文掲載)

文=小谷実知世

 

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