外国企業にとっての状況をさらに困難にするのは、高まる世論の圧力だ。例えば、外国に住むウイグル人たちは上海汽車集団(SAIC)との合弁で2013年にウイグル自治区のウルムチに工場を開設したフォルクスワーゲン (VW) について、「#ShameOnVW(恥を知れVW)」「#BoycottVW(VWをボイコットせよ)」などのハッシュタグを使い、ソーシャルメディア上での批判を強めてきた。
VWは声明で、同工場での強制労働や人権侵害はないとの見解を表明。同自治区の状況は理解しているが、「地元の発展」に向けて貢献していきたいと述べている。
ユニクロや無印良品なども批判を受けている。米シンクタンク戦略国際問題研究所によれば、「新疆綿」は中国が生産する綿花の約84%を占める。両社はその新疆綿を使用しているだけでなく、「宣伝に利用している」ことが特に問題視されているのだ。
「倫理的」ビジネスは可能か?
外国企業は当然ながら、自社のサプライチェーンを調査し、業務が国際的な行動規範に従ったものであることを確認する必要がある。だが、各社にとってそれ以上に考慮すべき重大な問題は、同自治区でビジネスを倫理的に行うことは可能なのかどうかということだ。
この地域に関する研究で知られるアドリアン・ゼンツは発表した論文や最近のフォーリン・ポリシー誌への寄稿のなかで、次のように指摘している。
「ウイグル自治区は現在、困難な政治環境下にあるその他のほぼすべての国と異なる状況にある。あらゆる力関係が、政府に有利に働いている」
つまり、外国企業が同自治区に進出し、そこで倫理的な事業を行うことは不可能であるということだ。