広告の未来を創る「ヴァーチャルインフルエンサー」の実力

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AI(人工知能)の普及によって人間の仕事が奪われる懸念が生じているが、ソーシャルメディア上のインフルエンサーの分野にもこの流れが及んでいる。

ケンタッキーフライドチキン(KFC)やルイ・ヴィトン、雑貨チェーンのベッド・バス・アンド・ビヨンドらは、ヴァーチャル(仮想)インフルエンサーを起用したSNS上のキャンペーンに注力を開始した。

KFCのヴァーチャル版カーネル・サンダースは人気を博したが、フランスのラグジュアリーブランドのバルマン(Blamain)がインスタグラム広告に起用した黒人やアジア系のCGモデルは、ダイバーシティの観点から問題視された。

そんな中、ソーシャルメディアの調査企業HypeAuditorは「2019年のトップ・インスタグラム・ヴァーチャルインフルエンサー」と呼ばれるレポートを公開した。それによるヴァーチャルインフルエンサーの投稿は、人間のインフルエンサーと比べて3倍もエンゲージメントが高いという。

インスタグラム上で現在最もフォロワー数の多いヴァーチャルインフルエンサーとしては、フォロワー数180万人の@Lilmiquelaや、33万人の@Noonoouriなどが知られる。また、@Imma.gramや@Shudu.gram、@Bermudaisbaeらも20万人近くのフォロワーを獲得している。

HypeAuditorの調査担当者は「ヴァーチャルインフルエンサーは今後、AIによって運営されるようになり、SNSマーケティングを激変させていくだろう」と述べた。「自動化されたアバターによるプロモーションを、どうやって検知するかも新たな課題になる」

CGで合成されたヴァーチャルインフルエンサーが、人間の仕事に影響を与えることも懸念される。バルマンはCG製モデルを広告に起用し、人間の人種的マイノリティのモデルの賃金を抑えたとの批判を浴びた。

さらに、人間そっくりに見えるロボットが、多くの人を共感させることに倫理的問題があるとする声もある。

ただし、現状ではヴァーチャルインフルエンサーはまだ初期段階だ。「ロボットたちは、クリエイターの意見を単純に代弁しているに過ぎない。超えてはならない一線を超えるような兆候は見られない」と、HypeAuditorは述べている。

広告ソフトウェア企業のSage Groupのバイスプレジデント、Andrew DunstはWWDの取材に次のように述べていた。

「ヴァーチャルインフルエンサーの広告への起用は、企業のPR上のリスクを引き下げられる。なぜなら、ロボットたちは人間の管理下にあり、人間のインフルエンサーのように、誤ったメッセージを発信することが無いからだ」とDunstは述べた。

編集=上田裕資

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