最近では、早出勤早退社をすすめる企業も増えてきているようです。なぜか日本では、それらが美徳とされ、早く会社にきて仕事をしている人がデキる人といった認識があるようです。しかしそれは、睡眠制御の中で重要な役割を持っている体内時計のメカニズムの観点から考えると、とても非合理的な考えかたなのです。
私達には、一人ひとり違う、遺伝子レベルでコントロールされている体内時計の特徴があります。「クロノタイプ」と言いますが、これは自分の意思で変えられるものではありません。生活リズムや睡眠の話題で、朝型、夜型という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか?
文字通り、朝型傾向の人は特に午前中にパフォーマンスを発揮しやすく、夕方以降になると眠さが増してきます。このような人にとっては早朝出勤で午前に重要な仕事を終わらせてしまうのはとても効率的だと考えられます。
一方、夜型傾向の人は午前はあまり活発になりづらく、夜になってくるとアイデアが湧いてきたりします。このタイプの人にとっては、早朝出勤はかなり辛い勤務体系になります。
しかし現代社会は、このクロノタイプの特徴を配慮をするような仕組みではなく、朝に弱い社員を当たり前のように、メンタルが足りないとか、ダラけた人間と考えてしまう傾向があります。夜型であるがゆえであり、全く悪気もなく、サボるつもりもないのに、です(朝型の人の場合は、ただの気の緩みの可能性もあります)。
そして、朝型と夜型の間に、中間型というものもあります。極端に朝に強いわけでも夜に強いわけでもなく、どちらでも調整できるタイプで、一番数としては多いタイプになります。
このクロノタイプのように、最近では、個々人で異なる睡眠や体内時計の特徴をどう尊重していけばよいかが少しずつ分かってきました。企業においては、睡眠時間、クロノタイプなど、あらゆる睡眠の側面の多様性を尊重することが、従業員の健康とパフォーマンス、そして会社全体としての利益の向上、企業価値の向上に繋がっていくことは間違いありません。