マスクの宇宙ロケット企業「スペースX」はこれまで、ファルコン9の着陸脚を内製していたが、現在はレース車両を製造する「オール・アメリカン・レーサーズ」に外注しているという。「当社よりも優れた製造技術を持つ企業があれば、喜んで製造を依頼したい」とマスクは起業家らに語った。
このイベントは米国空軍が宇宙関連のアクセラレーターStarburst Aerospaceと組んで実施した「United States Air Force Space Pitch Day」と呼ばれるもので、75社の宇宙分野の新興企業がベンチャーキャピタリストらにピッチを行った。
ここ数年、宇宙分野への投資は活発化しており、今年は既に50億ドル以上の資金が宇宙分野に注がれている。
スペースXは米国空軍と密接な関係にあり、ファルコン9を用いて複数の空軍の衛星を打ち上げている。イベントの場でマスクは空軍中将のJohn F. Thompsonと壇上にあがり、宇宙分野のビジネスについて話した。
マスクによると宇宙分野で最大の課題は、再利用可能で迅速に打ち上げ可能なロケットを開発することだという。現在のロケットは一部のパーツは再利用可能だが、ほぼ使い捨てであり、コストが非常に高いのが難点だ。「仮に航空機が使い捨てだったとしたら、笑い話でしかないが、それがロケット分野の現実なのだ」とマスクは話した。
マスクは新たなビジネスを立ち上げる際の姿勢についても言及した。「私は市場調査的なことは、一切やらない」と彼は話し、「自分自身が気に入らないプロダクトを、他の人々が気に入る訳がないだろう」と続けた。
マスクは常に、部下たちに大局的な視点を持たせることを意識しているとも述べた。「全ての社員がチーフエンジニアであるべきだ。自分の専門領域の事柄だけでなく、プロジェクト全体を把握することを求めている」
ワークライフバランスについて尋ねられると、マスクは苛立った表情になり、自分は可能な限り効率性を追求しており、休息をとる状況は限られると述べた。また、体調を維持するために、1日に15分から20分程度、トレッドミルなどでトレーニングを行っていると述べた。
自分は優秀なリーダーではない
また、テレビを見るのはトレッドミルに乗っている時に限られるとマスクは話した。彼が一番最近テレビで観たのは1996年公開の映画「スペース・ジャム」だという。
マスクは空き時間の大半を、科学やテクノロジー分野の読書に費やしており、ニュースは読まないという。「ニュースの大半はノイズに過ぎない。新聞が取り上げるのは、世界で起きた最悪の出来事ばかりだ」と彼は続けた。
マスクはソーシャルメディアへの愛情についても語り、「ツイッターは有意義な使い方ができる」と話した。彼がツイッターについてふれると、場内から笑い声があがったが、テスラの投資家らは顔をしかめたかもしれない。
昨年の秋からマスクは米国証券取引委員会(SEC)を挑発する言動を、ツイッターで繰り返した結果、SECはマスクを侮辱罪で告訴し、今年4月に両者は和解した。和解の条件はマスクが特定の事柄についてツイートする場合、事前に弁護士の承認を受けるというものだった。
企業のリーダーとしてあるべき姿を尋ねられたマスクは、時おり黙り込み、次のように述べた。「正直な話、自分が優れたリーダーだとは思わない。今までなんとかやってこれたが、多くの失敗も重ねてきた」