2019年10月28日、S&P500種株価指数が最高値を更新したのを受け、Yahoo.comはこう報じた。「株価が最高値更新、人々はがっかりしている(people hate it)」。この見出しがすべてを物語っており、投資家の行動がそれを裏づけている。
米ゴールドマン・サックスのデービッド・コスティン(David Kostin)をはじめとする株式ストラテジストは、10月25日付けのクライアント向けリポートで、「米国株ファンドからの流出は、今年これまでに累計で1000億ドルに上った」と述べた。「このペースで行けば、今年の株式ファンドからの流出額は、過去15年で2番目となる」
理由は数多く挙げられているが、現在の主犯は、不況が迫っているという展望だ。エコノミストや解説者たちは、事実上ひとり残らず、不況は絶対にやってくると予測している。ただし、問題がある。
不況に先行して「必ず」起きる3つの前兆が、「不況は来ない」ことを示しているのだ。
前兆その1──株価が下落する不況の前には、株価の下落が始まる。従って、現在の株価上昇は(記録された過去最高値は特に)、不況が「近づいていない」ことを立証している。
どうしてそう確信できるのか。それは、株価は予測に基づいて変動するものであり、ウォール街には先を読むことに長けた事情通がたくさんいるからだ。株式市場が重要な先行指標だと考えられているのはそのためである。
たしかに、予測は不確実なものであり、状況が異なる方向へと転じる可能性はある。しかし、不況にまつわるエラーとは、その到来を見落とすことではない。予測どおり成長が鈍化しても、実際の不況に陥るほど悪化はしない場合があるのだ(その好例が、2018年第4四半期の急落と、それに続く景気の低迷だ。実際には、プラスのペースで成長が続いた)。
ということで、100%保証しよう。今回の相場上昇から考えて、近い将来に不況が訪れることはない。
前兆その2──来たるべき不況について、エコノミストたちの合意がない「不況が目前に迫っている」という点でエコノミストたちの意見が合致しているときは、その予測を無視していい。
エコノミストの仕事は、正確さと判断に役に立つ、信頼性の高いデータを分析・評価することだ。しかし、彼らの専門知識は、過去の出来事を理解することにある。