米国の「中国株追放」で恩恵を受ける香港と上海の株式市場

Frame China / shutterstock.com

米トランプ政権は、米国の証券取引所に上場する中国株の廃止を検討中であるとの噂が浮上した。これが実施されれば、中国のテクノロジー領域のイノベーションに巨大な影響が及ぶことになる。

今回のニュースを受けて9月28日の株式市場で、中国のテック関連銘柄の多くが値を下げた。ここ数年で、米国で上場する中国のテック企業の数は上昇の一途をたどった。2018年に米国では190社が上場し470億ドル(約5兆円)を調達したが、そのうち中国企業は31社で85億ドルを調達していた。2017年には、16の中国企業が33億ドルを調達していた。

2018年の中国企業の米国でのIPO件数は、過去数年で最高に達していた。その筆頭にあげられるのが、24億ドルを調達した動画ストリーミングの「愛奇芸(iQiyi、アイチーイー)」や17億ドルを調達した格安Eコマースの「Pinduoduo(拼多多、ピンドォドォ)」、12億ドルを調達したEVメーカーの「NIO」、11億ドルを調達したテンセントミュージックなどだ。

2019年も中国版スターバックスと呼ばれる「ラッキンコーヒー(瑞幸珈琲)」が5月にナスダックに上場し、5億6000万ドルを調達したほか、ドローンメーカーの「EHang」も米国での上場を予定している。

これらの中国企業の多くは米国や中国、そして日本のソフトバンクなどから巨額の資金を調達済みだ。仮に、米国で中国企業の上場が禁止されれば、恩恵を受けるのは香港証券取引所になるだろう。昨年は44社の中国企業が香港で上場し、320億ドルを調達していた。

香港市場での上場で注目を集めたのは、評価額540億ドルで47億ドルを調達したスマホメーカーの「シャオミ」や、評価額530億ドルで42億ドルを調達した「美団点評(Meituan Dianping)」などだ。これらの2社はセコイア・キャピタル・チャイナやQiming Venture Partnersらの出資を受けている。

さらに、今年7月に上海証券取引所に新設された中国版ナスダックと呼ばれる「科創板」も、米国の中国企業排除の恩恵を受ける可能性がある。中国企業は自国のリソースに頼ることで、さらにテクノロジー分野のイノベーションを進化させていくかもしれない。

編集=上田裕資

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