「パナソニックビューティ」として展開するパナソニックの美容製品の宣伝キャラクターである水原の顔に親しみをもつ人も多いかもしれない。彼女が起用されたのは2014年9月。03年に13歳でモデルデビューしてから、10年公開の映画『ノルウェイの森』の主人公の恋人役に抜擢され、女優としても表現の幅を広げてきたところだった。
一方、パナソニックビューティは2010年から「忙しいひとを、美しいひとへ。」をコンセプトに、仕事やプライベート、人生の目標に向かって努力する忙しい女性をターゲットに展開してきた。そこで、「イキイキとした姿が パナソニックビューティのターゲットとする女性像とマッチする」という理由で、水原が選ばれた。また、幅広い年齢層から支持される水原の「豊かな表情」で、多くの人が共感する等身大の女性を表現したいと考える。
宣伝キャラクターから 「マーケティングパートナー」へ
6年目を迎えても、水原を継続して起用する理由として、同社担当者は「宣伝キャラクターという枠を超えて、パナソニックの『マーケティングパートナー』と言える関係になっています」と回答。つまり、「時代とともに進化し、お客様により良い商品を魅力的にお伝えするパートナー」となっているという。
さらに「自分の個性や内面を大切にされ、ますます活動の幅を広げられている水原さんの発信力の強さやパーソナリティは、女性、男性問わず『ジブンらしさ』『アナタらしさ』を求める時代に、パナソニックビューティがこれから目指していく姿と重なる部分が多いと考えています」と話した。
だが、SNSを通じた自由な発信は「アウトオブコントロール」であり、リスクも付きものだ。その点、企業としてどのようにとらえているのだろうか。
パナソニック担当者は「水原さんのSNSでの情報発信力も含めて表現者としての魅力を感じていますので、リスクは懸念しておりません」ときっぱり答えた。
2018年には、グローバルファッションブランドの広告塔にも相次いで決まった。3月にはアジア人で初めてコスメやフレグランスを扱う「ディオール ビューティ」のアンバサダーに起用される快挙となった。6月には、コーチとのパートナーシップを発表し、彼女がデザインしたバッグなどを発売し、コラボレーション商品を生み出し続けている。さらにグローバル広告キャンペーンにも登場するなど、世界的な評価も得ている。
なぜ彼女がいま、ミューズとして愛されているのだろうか。
ディオールの起用理由にそのヒントがあった。
「490万人(2019年9月時点で530万人)のフォロワーをもつ(水原の)インスタグラムで垣間見られるファッションやライフスタイル、ビューティライフからは、しなやかな感性と、強いエネルギーを感じられ、まさに現代のディオールウーマンを体現しています」
そこから垣間見えるのは、モデルや女優、 個人事務所への独立と、着々と築いてきたキャリアと、SNSを駆使してリアルな日常を発信している点への評価だろう。インスタグラムには、仕事の撮影情報だけでなく、プライベートでリラックスした表情を見せる水原の姿がある。
忙しい合間を縫ってエネルギッシュに楽しむ彼女の人生を追体験できるようだ。19年になってもその勢いは止まらない。ナチュラルミネラルウォーターブランド「エビアン」の夏のブランドアンバサダーに水原は指名された。“ジブンらしさの解放 ”と銘打った新しいキャンペーンで、「#IWANNA」を合言葉に、世間のプレッシャーやストレスをはねのけ、ありのままの自分で新しい一歩を踏み出すという狙いの企画。18年より各国のインフルエンサーをアンバサダーに迎えたグローバルキャンペーンの一環だ。水原の「常にジブンらしくナチュラルなスタイルが、キャンペーンのテーマにぴったり」という。
企業の意図によってどんな色にも染められる人ではなく、自然体であり、自ら七変化できる自己表現力が求められているのだろう。
Forbes JAPANでは、9月25日発売の本誌で、「WHO IS THE TRUE INFLUENCER?」(真のインフルエンサーとは何だ?)と銘打ち、トップインフルエンサー50人を選出。彼ら、彼女らの言葉やアドバイザリーボードたちの論考から、インフルエンサーなる現象を多角的に描く。
水原希子のインタビュー記事はこちら>本当のこと言えてる? 水原希子の「ブレない」発信の強さは、こうして磨かれた