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2019.09.18

「LabTech」で日本を変える。東大発スタートアップが10億円調達した狙い

(左)Spiral Ventures Japanパートナーの千葉貴史 (右)POL代表取締役CEOの加茂倫明

研究内容をもとに優秀な理系学生をスカウトできる新卒採用サービス「LabBase」、産学連携を加速する研究者データベース「LabBase X」を提供するなど、研究関連市場をテクノロジーで革新しようとする“ラボテックベンチャー”のPOL。

同社は9月17日、Spiral Ventures Japan、サイバーエージェント、Beyond Next Ventures、BEENEXT Pte.Ltd、PKSHA SPARX Algorithm Fundを引受先とした、総額10億円の資金調達を実施したことを明かした。

今回、調達した資金は、LabBaseの事業成長に必要なマーケティング強化と人員強化に活用していくという。POL代表取締役CEOの加茂倫明は「マーケティング強化に関しては優秀な理系学生との出会いを求める優良企業の利用拡大を進めていき、人員強化は、学生と企業のマッチング精度やユーザビリティを高めるサービスの開発、学生・企業へのサポート体制を拡充していく予定です」と語る。

なぜ、10億円を調達したのか?

POLの創業は2016年9月。代表の加茂は東京大学を半年間休学し、シンガポールに本拠地を置く「REAPRA(リープラ)」の傘下でオンラインダイエットサービスを立ち上げたほか、アプリ解析・マーケティングツールを提供する「Repro(リプロ)」でインターンを経験してきた人物。

そんな彼が理系学生の就活サービスを手がけることにしたきっかけは、先輩が研究室のOBの就職先や推薦などで就職先を決めようとしていた姿を目の当たりにしたからだ。

「理系の学生は研究が忙しく、就職活動に時間を割けない。そのため優秀な理系人材の就職が疎かになってしまっている。一方で、企業側は理系人材を採用したいと思っているにもかかわらず、なかなかアプローチできずにいる。優秀な理系学生をスカウトできる新卒採用サービスは絶対にニーズがあるのではないか、と思ったんです」(加茂)



こうして2017年2月にLabBaseはスタートした。リリースの2カ月前、大学のキャンパスに足を運んで直接声をかけたり、研究室を訪問したりして、泥臭く理系学生を300人集めた結果、リリース後から多くの企業に使ってもらうことができたという。

開始から2年半が経った現在、LabBaseの登録学生数は1.5万人、利用企業数140社を突破するなど、日本最大級のシェアを誇る理系学生の採用サービスに成長している。

このタイミングで10億円の資金調達を行った理由について、加茂は「LabBaseのユニットエコノミクスも見えてきて、さらに成長させるための打ち手が明確になってきたこと、そしてLabTech事業群(研究×Technology)として新規事業をつくっていくため」と語る。

「LabBaseに関しては、オンライン・オフライン合わせてB向けのマーケティングを強化していきます。新規事業について、研究関連市場は研究人材の市場もあれば、研究委託の市場もあり、研究機器の市場もある。こういった市場が隣接していて、合計で3.5兆円と大きなポテンシャルがあるので1プロダクト、2プロダクトではなく事業群をつくって戦っていく。最終的にはすべての市場を獲っていければと思っています」(加茂)
次ページ > 「研究者の可能性を最大化するプラットフォームを創造する」

文=新國翔大 写真=POL提供

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