2019年3月には、国内29万件の研究者情報や技術シーズのデータベース、および400名の博士人材による技術探索により、企業と研究者をマッチングするサービス「LabBase X」を開始。自分の研究のPR機会や研究資金に恵まれなかった研究者と、研究者の探索に苦労していた企業が、共同研究のパートナーとして出会う機会を提供している。
「LabBase Xはまだ検証段階ですけど、きちんと立ち上げていきます。またそれ以外の市場に関しても、一定の人員を割いて事業機会を見つけていきたいですね」(加茂)
LabTech事業群を創出していく
勢いよく成長していくPOLには、投資家たちも注目する。今回のラウンドで出資したSpiral Ventures Japanパートナーの千葉貴史は「ICC カンファレンス KYOTO 2017のスタートアップ・コンテスト『カタパルト』で優勝したときから、POLには可能性を感じていた」と振り返る。どこに可能性を感じたのか──千葉に聞くと、3つのポイントを挙げた。
「事業もそうですが、私は加茂さんの思考力と行動力、そして人を巻き込む力。この3つの力がどれも高い次元にある。どこかのタイミングで一緒にやってみたい、と思っていたので、今回のラウンドで出資できて良かったですね」(千葉)
行動力の高さは、リリース前に300人の理系学生を集めたことが証明しているように、人を巻き込む力の高さはPOLの組織が証明している。加茂はガリバーインターナショナル(現・IDOM)元常務取締役の吉田行宏とPOLを共同創業している。
加茂の年齢から、40歳近く離れた実業家を口説き、巻き込む。ここに千葉は大きな可能性を感じたという。
「吉田さんを巻き込んだ力もそうですが、加茂さんも日々、仕事を通じて吉田さんから、経営者としてどうあるべきか、を学んでいると思います。先日、会社の締め会に参加したのですが、自分でも驚くほど良い組織でした。中長期に会社をスケールさせていくにあたって、大事なのは組織。この組織なら、全員でひとつの方向に向かって戦っていけると感じました」(千葉)
「研究者の可能性を最大化するプラットフォームを創造する」をビジョンに掲げるPOL。今後、研究者の課題をテクノロジーで解決するLabTech事業群を創出していく予定だという。
「キャリア選択や企業との協業といった研究者の様々な課題を解決する事業群をどんどん作っていき、あらゆる課題を解決していくのを“縦軸”としつつ、グローバルな活動を“横軸”にし、さらに成長していければと思っています」(加茂)
また、千葉もこう語る。
「日本が“科学技術立国”と称されていたのは昔の話。今や研究開発、科学技術においては米国、中国との差は開くばかりです。そうした中、“研究者の可能性を最大化する”というPOLの中長期的なミッションは今の日本に必要ですし、自分もそこに強く共感しました。このミッションを実現できるように、自分も伴走しながらサポートしていければと思います」(千葉)
研究関連市場の課題を解決し、日本の科学と社会の発展を加速させる──POLの挑戦はまだ始まったばかりだ。