北欧と北極圏では、熱波に襲われ各地で過去最高気温を記録した夏が終わり、気候変動の不穏な兆候がこれ以外にも見られている。アイスランドでは先月、氷河の融解が相次いでいる問題に関心を集めるべく、住民が氷河の“葬式”を開いた。
スカンディナビア北部の象徴
ケブネカイセ山には主要な峰が2つある。うち南頂は氷河で覆われているが、一方の北頂には氷がない。北極線から160キロメートルほど北にある同山はスウェーデン人にはよく知られ、経験豊富なハイカーに人気の登山場所だ。
研究者らによると、ケブネカイセ山の氷河は過去20年間で毎年平均1メートルずつ解けていた。しかし今夏の熱波により、南頂ではわずか29日間で4メートルの雪が消失した。
気候変動に関して現在行われている研究の一環として、長年にわたりこの氷河の計測を続けてきたストックホルム大学のグンヒルド・ニニス・ロスクビスト教授(地理学)は、「これは、変化が起きていることをスウェーデンの全住民に対して示す、非常に明白で明確な合図だ」と語る。
山頂の雪解け水
ケブネカイセ山では1880年から毎年、夏の雪解けが終わった後に測定が行われてきた。今年の測定では初めて、氷に覆われていない北頂の高さ(2096.8メートル)が南頂の高さ(2095.6メートル)を上回った。
ロスクビストは、今年変化があったのは数字だけではないと語る。山頂の見た目も変化していたのだ。「雪が解けていたし、氷河の表面が今ほど低かったことはない。雪解け水が側面を滴り落ちているのを見た。これまで見たことがない光景だ」
冬になれば雪が降り氷河が再構築されるため、南頂は最高峰としての地位を取り戻すと予想されているが、研究チームは今後も夏に同じことが繰り返されると考えている。