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一瞬、会場が静寂に包まれた。客席からの視線は、すべて一点に注がれている。いつになくその視線が熱気をはらんでいるのは、今回の「大賞」が、会場を埋め尽くした一般参加者の投票で選ばれることになっているからだ。

8月22日、グランフロント大阪 ナレッジシアター。約150人が固唾をのんで見守るそのステージ上には、いくつものスポットライトの光が煌めいていた。



高校野球の甲子園のようなアワード

「今回、甲子園の高校野球のように地方大会から開催することは、この大会の理想でした」。イベント冒頭の挨拶で、「Forbes JAPAN」編集長代理の藤吉雅春は、大会にかける思いを語った。規模は小さいけれど、未来を拓く大きな可能性を秘めた企業を発掘する「スモール・ジャイアンツ」プロジェクト。その中でも、ひときわ可能性が光る企業を表彰する「スモール・ジャイアンツ アワード」は、今回で3回目を数える。



これまで、同アワードは、年1回のイベントで受賞企業を決定していたが、今回は初の試みに挑戦した。それが、関西、関東、その他の地域の3ブロックで行う地方大会だ。日本全国にネットワークをもつアドバイザリーボードからの推薦と事前審査によって、受賞候補となる企業を選出。その後、イベントでファイナリストによるプレゼンテーションを行い、会場からの投票を経て大賞と特別賞を決定する。最終的に、各地方大会の大賞を受賞した3社の中から「Forbes JAPAN SMALL GIANTS AWARD 2019-2020」グランプリが決まる。より草の根の場所から、小さくても光る企業を選びたいという思いを反映させたかたちだ。

第一弾となる関西大会では、大阪府、京都府、兵庫県、和歌山県、奈良県、滋賀県、三重県の2府5県から7社を選出。各社の代表が舞台に立ち、自社の活躍ぶりを披露した。他にはない独自技術や、地域からグローバルへのビジネス展開、地域経済の活性化に向けた企業連携など、いずれも大きな可能性を感じさせる熱のこもったプレゼンテーションだった。



会場でプレゼンテーションを聴く約150名の参加者も、自分たちが審査員のひとりとあって、次から次へと語られる「小さな大企業」たちの興味深い話にじっくりと耳を傾け、熱心にメモをとる姿も見られた。すべてのプレゼンテーションが終わると、参加者たちはやや緊張した面持ちで、投票箱に向かった。

そして、関西大会の大賞および特別賞が発表された。受賞内容は以下の通りだ。

大賞:ハート・オーガナイゼーション(大阪市淀川区)


ハート・オーガナイゼーション 菅原俊子 代表取締役

医師同士が互いの医療技術を高め合う症例検討プラットフォーム「e-casebook」を運営。ウェブ上で自らの経験や技術、情報を共有、相談、検討したり、学会を開いたりできる。現在の会員数は約1万人で、その過半数が海外の医師。

国家間、地域間、熟練者と若手との間にある格差を是正し、医療技術の底上げに寄与している社会性が高く評価され、大賞を受賞した。

パイオニア賞:アーテック (大阪府八尾市)  


アーテック 藤原 悦 代表取締役社長

年間500点の新商品を市場に投入し続けている教材メーカー。幼稚園から大学まで、公立・私立を問わず教育現場とネットワークを有している。プログラミング教材「アーテックロボ」では、世界各国で特許を取得し、60カ国以上で展開。モンゴルやシンガポールでは国家指定の教材に選定されている。

教材という側面から、未来を担う子どもたちの教育文化をグローバル規模で創造している点が評価され、「パイオニア賞」を受賞した。

セカンドローンチ賞:中村製作所 (三重県四日市市)


中村製作所 山添卓也 代表取締役

「空気以外なんでも削ります」をモットーとする切削加工の町工場。自社製品の開発・販売に力を注いでいる。得意の切削技術で極限まで気密性を高めた無水鍋「ベストポット」は、火を止めた後も2時間、60度の熱を維持して調理ができ、無水鍋ブームと相まって注目を浴びている。

もともとは、特定の大手企業に依存する下請けだったが、事業承継を経てビジネスモデル転換を図り、自社の技術力を生かしたユニークな製品を手がけていることが評価され、「セカンドローンチ賞」を受賞した。

カッティングエッジ賞:アベル (大阪府八尾市)


アベル 居相浩介 代表取締役

ステンレスの表面加工処理を手がける技術屋。電解発色による独自の表面処理技術で開発した黒いステンレス「アベルブラック」を製造・販売している。表面皮膜が1ミクロン以下で、曲げ加工しても変色しないなど、同製品は塗装やメッキと比べて装飾性・機能性に優れており、建築や自動車、インテリアなどの領域で使用されている。

世界で唯一の技術をもち、一流の大手メーカーとも対等に取引している点が評価され、「カッティングエッジ賞」を受賞した。

ローカルヒーロー賞:植山織物 (兵庫県多可郡多可町)


植山織物 植山展行 代表取締役

江戸時代から200年以上の歴史をもつ綿織物「播州織」を主業とし、地域最大規模の織布工場を保有。自社で商品企画からデザイン、製造、販売まで一貫して手がけており、シャツなどアパレルの最終商品も展開。グローバル20カ国以上に提供している。

IT化による組織改革や効率化にも力を注ぎ、自社だけでなく、播州産地内の縫製工場と連携するなど、地域の企業を巻き込んだ生産性の向上に取り組んでいる点が評価され、「ローカルヒーロー賞」を受賞した。

ロングラン賞:スミロン (大阪市天王寺区)


スミロン 春山英二 代表取締役社長

自動車向けなどの表面保護フィルムで国内有数のシェアをもつメーカー。ミクロン単位の薄膜を多層コーティングできる技術力を生かし、使用済みおむつを密閉パックする独自製品「エコムシュウ」を開発。同製品は、菌やウイルス、臭いを衛生的に閉じ込めることができ、医療・介護業界で熱視線を浴びている。

既存ビジネスに甘んじることなく、10年以上の歳月をかけて研究開発を重ねて、自社商品をアップデートし続けている点が評価され、「ロングラン賞」を受賞した。

クラフトマンシップ賞:キンキメタル産業 (大阪市西淀川区) 


キンキメタル産業 堀内照弘 代表取締役社長

レアメタルのリサイクラー。国内有数の電気炉による熔解精錬技術をもつ。回収した多種多様な金属スクラップを配合・溶解することで、レアメタル含有の合金再生塊を製造。他社では扱うことが難しい廃金属でも、自在に組み合わせて再生できる。

成分表も併せて提供することで、顧客である特殊鋼メーカーの信頼を得ている。50年以上積み上げてきた職人技術で、循環型社会の形成に貢献している点が評価され、「クラフトマンシップ賞」を受賞した。

7社のプレゼンテーションがみせたもの

7社のプレゼンテーションで顕著だったのは、業種・業態は異なるものの、それぞれの会社の技術や商品、サービスが、その道のプロフェッショナルに認められていることだ。しかも、それによって、さらなるビジネスの広がりを見せている。

例えば、ハート・オーガナイゼーションの症例検討プラットフォーム「e-casebook」は、日本だけでなく、海外の医師が技術を学ぶために利用。国家間の医療格差の是正につながり、最終的には患者の受けられる医療サービスの質が高まっていく。アベルの黒いステンレス「アベルブラック」は、大手自動車メーカーのデザイナーに認められて高級車に採用されたが、これが実績となって、他の自動車メーカーや、ハイブランドの店舗の内外装にも広まっている。また、アーテックが教師の悩みを徹底的に吸い上げて開発したプログラミング教材は、世界中に広まり、今や国家指定教材に選定する国も現れるほど飛躍した。


内田研一審査員長

イベントの総評で、審査員長を務めたビジネスプロデューサー・内田研一は、こうしたビジネスモデルを「BtoP(Business to Professional)」と表現した。「世界中の目利きたちに、日本の技術・商品・サービスを認めてもらう。これができる会社が、今日集まってもらったファイナリストだと思いますし、それこそが、スモール・ジャイアンツなのだと思います」。

こうした「小さな大企業」は、まだまだ日本全国に存在する。9月30日には、第二弾の関東大会が、東京の日本橋室町三井タワー 室町三井ホール&カンファレンスで開催される。大賞を選ぶのは、アワードにご来場いただくみなさま。奮ってご参加ください。

「Forbes JAPAN SMALL GIANTS AWARD 2019-2020」へ読者の皆様を特別ご招待!

文=フォーブス ジャパン編集部 写真=大星直輝

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