世界的には、LGBTQ+をサポートする、いわゆる「プライド月間」は6月なのだが、アムステルダムでは、毎年この時期に大規模なプライド・イベントが開催される。
イベントのハイライトは、8月3日の土曜日に開催された運河(キャナル)パレード。アムステルダムの駅を囲むように流れる運河を、装飾された様々なボートが、水上パレードを展開する。今年は、日本から「プライドハウス東京」のチームが、このパレードに参加するために来蘭していた。
パレードを控えた7月16日、アムステルダム市内のホテルで開催された記者発表では、プライドハウス東京の代表である松中 権氏が、パレード参加の理由を説明した。特別ゲストとして、漫画家の田亀源五郎氏も参加。田亀は、ゲイであることを公表して活動するアーティストとして、プライドハウス東京の活動を支持しており、今回、パレードで使用する船を彩る横断幕を製作した。
ラグビーW杯にちなんで
プライドハウスは、2010年バンクーバー冬季大会での立ち上げ以降、大型の国際スポーツ大会の開催にあわせて、地元のNGOやNPOが主体に運営されてきた、LGBTに関する情報発信と拠点を提供する国際的な活動。2014年、国際ネットワークである「プライドハウス・インターナショナル」が結成され、日本からは、松中が代表を務める認定NPO法人グッド・エイジング・エールズが参画。「LGBTと、いろんな人と、いっしょに」をコンセプトに、2010年4月より様々な 「場づくり」を実践してきた。
2018年9月、セクターを超えた団体・個人・企業とともに、「プライドハウス東京」コンソーシアムが結成された。プライドハウス東京は、2020年の東京五輪に向けて今年4月に始動。今秋、日本で開催されるラグビーW杯の期間中にも、原宿に発信拠点をオープンする予定だ。
そのためもあって、今回は田亀は、ラグビー選手をモチーフにした横断幕を製作。「人種やセクシャリティーの表現は、できる限りインクルーシブな形を意識し、見た人が自由に解釈できるような表現にした」と作品について説明する。
LGBTQ+の活動を広めることにおいて、アートやデザインの役割は大きい。漫画という多くの人にとって親しみのある媒体を使うこと、またロゴデザインのように一目見て「おしゃれでカッコイイ」表現を使うことで、一般の人の意識にわかりやすく届けることができると、田亀は言う。
欧米諸国に比べると、LGBTQ+のコミュニティに対する意識や理解が乏しい日本だからこそ、クリエイティブの力がより重要であると、松中も分析する。ちなみにプライドハウス東京のロゴは、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の公式エンブレムを手がけた野老朝雄がデザインしている。
今回、プライドハウス東京が、LGBTQ+の先進都市であるアムステルダムのパレードに参加する意義の1つは、海外での取り組みを介して、プライドハウス東京の活動を逆輸入的に発信することだった。