それは、2008~09年にも起きたことだ。米国株は37%、ドイツ株は42%、中国株は62%下落した。商品価格は37%値下がり(原油と銅の価格は54%下落)した。投資家たちのポートフォリオは、全面的に打撃を受けた。
このときの危機の本当の原因は、2001年9月に当時の米連邦準備制度理事会(FRB)の議長、アラン・グリーンスパンが異なる資産を保有する投資家たちの損失を抑えるために実施した「グリーンスパン・プット」(金融緩和)にまでさかのぼる。
この措置は、投資家が資産を売却せずに別の資産を購入することを助けるものだった。その後、2007年まで株式、商品価格、米長期債が同時に値上がりした理由は、ここにある。米長期債の価格は通常、株価や商品価格とは逆の方向に動くものだ。
FRBと欧州中央銀行(ECB)、日本銀行が2008年以降に再び金融緩和策を取り始めて以降、異なる資産カテゴリーの間の関連性は改めて確認され、強化されてきた。繰り返すが、投資家たちは資産を売却しなくても、資産を購入できる状況にある。ゼロに近い金利での借り入れが可能であり、それによって利回りが良いどの資産でも買うことができる。
実際のところ、投資家たちは常に、過大評価されているその他の資産に比べ、過小評価されているとみられる資産を探している。米国債は、利回りがマイナスになっているドイツ国債や日本国債に比べ、過小評価されているとみられている。米国がすでに巨額の財政赤字を抱え(対GDP比で105.40%)、それが拡大し続けていることを気にする必要はない。
また、投資家たちは普通預金口座に寝かせておくよりも良い投資だとして、利回りの高い新興国債券や高配当株を買っている。簡単に言えば、金融緩和はあらゆる分野でいくつものバブルを形成してきたということだ。
一方、金融緩和は資産配分という古い戦略の価値を低下させた。バブルが崩壊すれば、予想外に痛手を被る投資家もいるだろう。
「いつ」破裂する?
複数のバブルがいつ破裂するかを予測することは困難だ。だが、どのような出来事が起きた場合にそれが起きるのかを考えてみることは、それほど難しいことではない。
例えば、「テキーラ・ショック」と呼ばれたメキシコ通貨危機、アジア通貨危機のような1990年代に発生した新興市場での危機を例に挙げることができる。多額のドル建債務を持つ新興国の通貨が急落、国債が債務不履行になる可能性が高まることなどが引き金となり、バブルが破裂する。
2000年代初めの米国のエネルギー企業エンロンや電気通信事業者MCIワールドコムの破綻など、公開企業に対する投資家の信頼を揺るがす大企業の失敗がきっかけとなった例もある。そして、2008~09年に起きた金融危機のころに明るみに出た米ナスダック元会長バーナード・マドフによる巨額詐欺事件のように、ウォール街のスキャンダルが引き金になる可能性もある。
ただし、現状はこれらの問題が発生したころとは大きく異なる。金利は現在、例に挙げた危機の当時と比べてはるかに低水準だ。つまり、現在の方が以前よりずっと積極的に行動しなければ、高い利回りを追求することはできない。
一方、世界経済が貿易戦争と通貨戦争によって分断される中、各国の中央銀行は「弾切れ」になりつつある。言い換えれば、状況に対処するための政策手段はほぼ使い果たされているということだ。