ネットにおける情緒性の醸成からオムニチャネルへ
リアルが中心だったこれまでのブランドビジネスとは反対に、デジタルを起点にすることでD2Cにおけるオフラインの意味・価値は大きく変わった。そのひとつの事例がMEDULLAだが、アパレルブランドの「10YC」を展開する下田将太も、「リアル起点でブランドを考えたことはありません」と話す。
10YCの下田将太
ポップアップを定期的に開催しつつも「ポップアップでの新規顧客の流入はあまり視野にないですね。ウェブで新規客にターゲティングするため、消費者はブランドを知った上で商品を見るためにポップアップに訪れてくれるので、購買率も高いんです」という。
ただ、オンラインが単なる顧客獲得と販売のための機能的なプラットフォームかといえば、そうではない。下田はECにこそ「情緒的な側面」を求めるべきだと話す。
「機能面だけならアマゾンやECモールで買う方が絶対に便利です。独自性を持つD2Cブランドだからこそ、ここでしかない価値を作ることが必要。無味無臭の購買ではなく、ECサイトでも温度感のある対応ができるかどうか。消費者がブランドのサイトに求めているのは“温度感”だと思います」。
“引き算のチョコレート”をテーマにした「Minimal」を創業した山下貴嗣も、「顧客が最適な方法で買うためには、リアルもデジタルも両方必要。購買自体はデジタルの方が楽だが、情報伝達量はリアルの方が圧倒的に多いですから」と語る。
Minimalの山下貴嗣
情報量と機能性がメインと考えられてきたECサイトだが、そうではない情緒的な側面を打ち出したり、五感を使って全身で体験ができるリアルな空間での情報量をフル活用するなど、オンラインとオフラインを融合して考えるオムニチャネルの捉え方自体が、これまでのブランドビジネスから大きく変化しつつあるようだ。やはり「デジタル起点」でビジネスを考えているからこそ、こうしたチャネルシフトが起こるのだろう。