当時は開校したばかりで、生徒数53人の小さな学校だったが、目的は「社会を変えるチェンジメーカーをこの学校から輩出する」こと。
16年には、イギリス、シンガポール、インドなどから国際的な教育機関が集まるUWC(公益社団法人ユナイテッド・ワールド・カレッジ)に日本で唯一加盟し、「名実ともに世界有数の学校の一員となった」(小林)。
現在、世界73カ国から190人が学び、約7割の生徒に奨学金を給付することで多様な家庭環境の若者に門戸を開く。卒業後は世界の名門大学や、起業家の道などに進む。 学校には「新しい教育モデル」を求めて、各地の教育委員会や私立学校、教育関係者らが視察に訪れ、相談を求めるようになった。
19年4月には、教育関連の起業家らを支援するアクセラレータープログラムを開始。小中学校校長の経営力向上や、NPOやスタートアップの事業開発支援、政策提言などに取り組み、多様な教育の選択肢づくりを始めた。
女性の活躍は、CSRから「経営課題」になった
Forbes JAPANでは、創刊年よりほぼ毎年、女性特集を行っている。「男組織における『女性力』の研究」(2015年1月号)、「イノベーション女子」(同9月号)、「発見!世界で闘う日本の女性55」(16年9月号)、「Women at Work 100通りの転身」(18年9月号)の計4回で、19年9月号でも、「Self Made Women(自力で成功をつかんだ女性たち)」をテーマに特集している。
一貫して取り上げてきたのは、海外や起業などで突破口を見出し、周囲を巻き込みながら社会課題の解決に挑む女性たちだ。特に、「発見!世界で闘う日本の女性55」は日本とアメリカの有識者に協力を請い、世界で活躍する知られざる女性たちを選出し、反響を得た。
なぜ海外で活躍する日本人女性を取り上げるのか。言うまでもなく、日本は男女平等ランキングで世界149カ国中110位前後と先進国中でも目立って低く、特にビジネスの世界では女性が活躍する環境にない。
国連の中満 泉氏を取り上げた同特集の巻頭記事「国連の日本人ナンバー2が語る、『世界の不条理』に私が教わったこと」でも触れたが、「男は出世や社会的地位を目標とし、女は自分の役割が活かせる場所を求める。その結果、いつの間にか国内から女性の『頭脳流出』という現象が起きている」認識があるからである。
一方で、16年からはForbes JAPAN Women Awardを開催し、女性活躍に実績を上げた日本企業や、組織の中で活躍する女性たちを発掘、表彰してきた。過去5年での変化は、大企業においても女性の働く環境の改善はCSRではなく、経営として必要という認識が広がったことだ。
同年に最も先進的な多様性の取り組みとして受賞したカルビー社の松本晃会長(当時)の「飛行機は片翼では飛べない」という言葉の通り、ダイバーシティと経営が一体化してみられるようになったことである。