何十億ドルもの多額の資金を投資に充てられる名門大学の基金は、資金の運用のために最も優れた専門家を雇うことができる。これは恐らく、投資家が注目すべき重要な点だろう。
投資に対する大学基金のアプローチから、投資家は何を学ぶことができるだろうか。ハーバードとイエールの両大学の基金を例に考えてみたい。
株式投資について
ハーバード大学とイエール大学の基金が投資対象とするのは、およそ50%が株式だ。長期的に見れば、最大のリターンをもたらすのは主に株式であり、基金は長期的な運用を重視していることから、これは驚くことではない。
ただ、どちらの基金も購入した株を長く持ち続ける「バイ&ホールド」のアプローチだけを取っているわけではない。運用に「絶対収益戦略」を取り入れているヘッジ・ファンドへの投資も行っている。
また、市場を通じて株式を保有するだけではなく、基本的に企業そのものを直接所有することになる非公開株への投資も積極的に行っている。イエール大の基金は、成長の見込みが大きい新設企業を重視するベンチャーキャピタルへの投資にも力を入れている。
企業を売却することは株式の売却より困難であり、このような投資は流動性が低くなる可能性がある。それでも、経営者のスキル次第では、公開株への投資より大きなリターンを得ることができる。投資の形態がどのようなものであれ、どちらの基金も投資対象として重視しているのは企業だ。
分散投資について
両大学の基金の投資戦略から学べるもう一つのことは、分散投資の重要性だ。いずれも株式に加え、不動産や天然資源、債券などに投資している。景気後退やインフレ率の上昇など株価の下落が予想される状況において、これらはポートフォリオを保護するものとなる。
投資については、ハーバード大の基金の方が少し保守的だと言えそうだ。保有する資産の約3分の1が、現金のほか債券と不動産、商品向けの投資となっている。イエール大の基金にこれらが占める割合は、およそ5分の1だ。
どちらの基金の場合も、株式以外で保有する資産のうち最大の割合を占めるのは、不動産となっている。歴史的に見て、不動産投資は最大のリターンをもたらしてきたものの一つであり、これも驚くべきことではないだろう。
いずれも株式投資の割合が大きいのは明らかだが、経済環境が変化しても合理的なリターンが得られるよう、投資先を分散させている。イエール大の基金が投資している公開株は、大半が外国企業のものだ。ハーバード大の基金もまた、インフレ対策を念頭に置いた分散投資を行っている。
持続可能な投資の重要性
ハーバード大学の基金は、持続可能な投資に特に焦点を当てており、米国の大学の基金としては初めて、国連の主導した「責任投資原則(PRI)」に署名。投資に関する選択においては常に、環境・社会・ガバナンス(ESG)を基準としている。
投資に関するアプローチについて、全てを両大学の基金と同じようにすることは不可能だろう。だが、ここから学べることはいくつかある。長期的なリターンを高めるには株式への投資を基本とすること。そして、株式だけに限らず、投資対象を分散させることだ。