年初来で見てもここ3カ月で見ても、フォードの株価が値上がりしている一方で、テスラの株価は値下がりしている。過去2年間の下落率も、テスラの方が高い。両社の配当金を考慮すれば、評価の差はさらに広がる。伝統的な自動車メーカーは絶滅に向かうと考えているEVファンたちにとっては、驚くようなことも起きるかもしれない。
金融情報ポータルサイト、インベスティング・ドット・コムのシニアアナリスト、クレメント・ティボーは両社の株価について、次のように説明している。
「貿易交渉に関する楽観的な見方も出てきたことで、下落していたフォードの株価が回復したこと、テスラ車の需要に関する懸念が同社の株価を押し下げたことで、現在のような状況となっている」
「だが、両社の現時点でのパフォーマンスは、一時的な期待と懸念を反映したものだ。そのため、長続きはしない可能性がある。ここ1年間、フォードは過小評価され、テスラは過大評価されてきた。いずれについても、市場は株価を適切な方向へと調整している」
さらに、フォードの場合は規模の経済と範囲の経済の効果が有利に働いている。同社は売上高およそ1587億ドル(約17兆1950億円)の古い会社だ。一方、歴史の浅いテスラの年間売上高は、その8分の1程度(約225億9000万ドル)にとどまる。
フォードの売上高に貢献しているのは高級車ブランドのリンカーンのほか、主にクロスオーバーSUVとトラック、バンとなっている。テスラが生産するのは、セダンとSUVのみだ。
規模が大きく、提供する車種も幅広いフォードは、テスラに対してコスト面での優位性を持つ。それが、両社の利益率の差につながっている。今年3月期の売上高純利益率はフォードが1.95%、テスラが-4.29%だった。
投資家の間ではテスラの売上高の伸びを後押ししてきた政府の補助金について、今後を不安視する見方がある。また、テスラはEV市場を大衆市場に変えた上で、同市場での優位性を維持すると約束してきたが、それを疑問視する声も出始めている。
マネジメント誌ハーバード・ビジネス・レビューは過去に、テスラはウォール街が考えるほど破壊的ではないと指摘する記事を掲載した。本当にそうかどうかはまだ分からない。だが、ここ数年を振り返ってみれば、フォードなどの伝統的な自動車メーカーに投資していた方が、テスラ株を購入するより優れた戦略であったようには思える。