「働き方のユートピア」は世界のどこにあるのか?
山田雄介 WORK MILL編集長
働き方のユートピアを探し求めて、アメリカやイギリス、中国、タイ、デンマークなど、世界中を駆け巡ってきました。そこで見えてきたのは、ユートピアとは、すでに「ある」ものではなく、「つくる」ことによって生まれるのだということです。そして、これから日本が目指すべきは、「持続可能性の高い働き方」と「イノベーションを生み出す働き方」の2つをつくることだと思います。
デンマークで見た働き方は、前者でした。学習プロセスによる人材育成が特徴で、「働く」と「学ぶ」が連動し、行き来できる仕組みがつくられていたのです。求める職業に対し、学生は目的と成長に合わせた学びのプロセスを選択し、社会人になっても新たな職(キャリア形成)のたびに繰り返し学びを行います。仕事による「実践」の学習を人生で繰り返し、専門能力を形成し、またギャップイヤー制度などキャリアに余白期間をつくりながら持続的に働きます。学ぶも働くも、自らつくる行為が自己肯定感を高め、持続性を生み出す幸福感を醸成しています。
自分自身に問いながら「ビジョン」をつくり、成長に合わせた「プロセス」を選択し、その実現を目指す──。
そんな「持続可能な働き方」には、フレキシキュリティな社会制度と、一人ひとりが自分の「生き方」を考えるマインドセット、それをつくっていく行動力が求められます。
後者では、「破壊」的なシリコンバレー式ではない、日本式があると考えています。アドビシステムズのクリエイティビティに関する意識調査「State of Create: 2016」では、日本と東京が世界で最もクリエイティブな国と都市に選ばれています。日本は人種的な多様性は乏しいですが、これほど多くの外国文化を取り込んだ国はありません。自国の文脈を理解しながら、異文化を取り込み、新しい文化やスタイルをつくってきました。
自分たちなりの意味を加え、新しい価値に変容する「リ・インベンション(再解釈)する力」が日本人の強み。既存の知をこれまでと異なる視点から捉え、自らのビジョンや感性を通じて再解釈して、新たな知へと生まれ変わらせる「知の回生」こそ日本式です。そんな日本式イノベーションは、働くことの楽しさや喜びの回生につながり、同時に持続可能性も生み出すではないでしょうか。