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ジェームス・W・ヤング 『アイデアのつくり方』

各界のCEOが読むべき一冊をすすめる本誌の連載「CEO’S BOOKSHELF」。今回は、カインズ代表取締役会長の土屋裕雅が「誰でもジョブズのような 斬新な発想ができるのか」を紹介する。


革新的な製品を生み出したスティーブ・ジョブズや、ショッピングの概念を大きく変えたジェフ・ベゾスは、それまでなかった新しいモノを送り出すことで、世の中にイノベーションを起こしてきました。彼らほどの大物でなくても、「あいつの発想はいつも斬新だ」「彼はセンスがいい」などと、その能力や資質に驚かされ、うらやましく思う人が、あなたの身近にもきっといるはずです。

なぜ、彼らだけが特別な才能に恵まれたのでしょうか? いいえ、彼らだけではありません。本書の著者であるジェームス・W・ヤング氏は、単純明快にまとめた手法に従ってアイデアづくりに取り組めば、私たちもその能力を最大限に活かせるようになるといいます。

ヤング氏は、アイデアこそ全てである広告業界で、長きにわたって活躍してきました。その経験から彼は、「新しいアイデアは、既存のモノの組み合わせから生まれる」と定義し、まずは知識を収集して、その知識をかみくだいた上で熟成すれば、新しいモノを生み出せるという公式を導き出しました。

そう、私たちがこれまでクリエイティブだと思っていた分野には実はセオリーがあり、そのセオリーを理解してプロセス通りに進めれば、誰もがセンスのいいモノやアイデアを生み出せるようになるというのです。

17年前、私が社長に就任したその年、ホームセンター業界では大きな再編が起こり、カインズは業界トップの座を明け渡しました。業界の上位だった複数社がひとつになったためでしたが、それからのカインズは、その巨人の背中を追いかけながら、業界に先駆けてSPA(製造小売業)を始めるなど、環境の変化を受け入れ、自らの形も変えながら成長してきました。チャレンジャーになれたからこそ、カインズを、そして、経営者としての私を育ててくれたのです。

この10年、私が心がけてきたのは自らの成長のための目標管理です。「年間100冊の本を読み、60本の映画やライブを観て、300の店舗を訪問し、1000キロ走って100キロ泳ぐ、影響を受ける新たな人に20人会う」など。テーマや数は毎年変わりますが、マネジメントの質を上げるため、また、若い経営者たちに負けない感性でいるために続けてきました。結果としてこれが、ヤング氏の言う知識の収集となり、経営者にとって必要な力を蓄積してくれたのだと思います。

今年、カインズは創業30周年を迎えました。次の30年に向けて進むべきは「IT小売業」への道です。この道を進んでいけば、新規出店に頼りすぎず、人手不足にも苦しまない、新しい小売業の形が見えてくるはずです。現状に満足せず、これからも変わり続ける企業でありたいと思っています。

title:アイデアのつくり方
author:ジェームス・W・ヤング 今井茂雄(訳)、竹内均(解説)
data:CCCメディアハウス864円(税込)102ページ


つちや・ひろまさ◎1966年、群馬県生まれ。90年、早稲田大学商学部卒業後、野村證券に入社。96年いせや(現ベイシア)に入社。98年、カインズに入社し、取締役、常務取締役を経て、2002年に代表取締役社長に就任。19年3月より現職。

構成=内田まさみ

VOL.28

大人だからこそ読むべき物語 | CEOの一冊 

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