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情報が溢れ、多忙な毎日を送る現代人にとって、一日をリセットし質の良い睡眠を取ることは、翌日のパフォーマンスに不可欠だ。昨今のヘルスケアのキーワードでもあり、グーグルをはじめとした企業や米国の一部の小学校から刑務所内まで幅広く実践されている「マインドフルネス」を使い、一日をリセットしより良い睡眠を取る方法について紹介する。

諸説あるが、人間は一日に数万回から十数万回の思考を巡らせていると言われている。特に、スマートフォンなどから否応なく情報が流れてくる現代人は、その情報に反応しイメージを膨らませたり、考えたりとせわしない。

「何もしないことをする時間を意識的につくるのは重要です」と語るのは、東京マインドフルネスセンター長で、日本人では数少ないマサチューセッツ州立大学メディカルスクール主催MBSR(マインドフルネスストレス低減法)クオリファイドティーチャーの長谷川洋介氏。

一日を振り返り、マインドフルネスを実践する方法

一日をリセットするマインドフルネスの方法は、まずは安全で静かな時間と場所を確保し、椅子や床に坐骨を立て背筋を伸ばし安定した姿勢で座ること。

「姿勢が整ったら、今日はどんな仕事をし、失敗や成功があったか、何が気になったのか、喜びや悲しみはあったか、体のどこがこわばっているかなど思考や感情、身体感覚を含めた自身の状態を把握し、一日を振り返りましょう」

次に上記で凝っていると感じた体の箇所を心地よいと感じる程度でほぐしていく。このとき大事なのは、無理をせず、可動域など自らの限界を知り、優しさを持って自分の体に向き合うことだ。

「特にスマートフォンやパソコンと向き合って一日の大半を過ごしている人が、こわばりがちな首や肩、腰、手首や足首をほぐしてあげましょう。それらをほぐすと眠りやすくなります。決まった方法はなく、ヨガやストレッチ、ストレッチポールなどの道具でも良いので、どの方法がベストかに気づくことも大切です」。首は人間にとって重要な箇所なので注意深くほぐしてあげよう。また左手の指と右足の指を握手すると、足首をまわすことができる。

 ほぐしたら再び椅子や地面に座り、今度は呼吸に意識を向ける瞑想を行う。鼻からの呼吸を観察しても良いが、お腹に手を当てたり、右手を胸に左手をお腹に当て、お腹や胸が呼吸で動くのを感じ呼吸を観察しても構わない。呼吸に意識を向けると、将来や過去のことなどさまざまな考えが自然と湧き上がり、いつの間に考え事をしていることがある。

「考えが浮かんだり、心配が湧き上がるのは自然なことです。それらに対し、思いやりや優しさを持って受け止めてあげる視点が大事なんです。受け止めたら、また呼吸に意識を戻しましょう」。何度思考が湧き上がっても、思考に気づき呼吸に意識を戻すことを繰り返す。

よく瞑想を何分間行うと良い、といった議論があるが、同氏は「何分間行うかよりも、心のざわめきをどれだけ鎮められるか、思考に気づいているかといった質が大切です。同じ人でも、体調やその日の出来事によって心が鎮まる時間は変わってきます」という。つまり、体をほぐすことや呼吸に意識を向けた瞑想にしても各自が体調などに合わせオーダーメイドで行うことが大切だ。

以上が基本的な流れだ。マインドフルネスというと瞑想ばかりが注目されるが、他にもさまざまな方法がある。そのひとつがボディスキャン。仰向けになり、踵、足の裏、足の指一本一本、足首…と全身の各部位に気持ちを止め、生じる微細な感覚を感じ取る。こうして心を鎮め、一日を振り返ることが安眠につながるという。

マインドフルネスとは

マインドフルネスは、1979年に分子生物学者のジョン・カバットジン氏がヨーガや仏教瞑想をはじめとする東洋的な業法を体系化したプログラムであるMBSRを開発したのが発端となり、2000年前後にマインドフルネスに関する論文が増加、日本でも注目を集めることとなった。

マインドフルネスは、パーリ語で「気づき」を意味する。同氏は「心、感情、思考、身体感覚などを含めたありのままの自らの存在の全体性に気がつくことがマインドフルネス」と語る。毎日の練習により、自分への気づきがやがてまわりへも広がり、本来備わっている理性的で優しい気持ちが生まれてくるという。

嬉しいことに、マインドフルネスを継続して行うことで集中力やパフォーマンスのアップが期待される。「マインドフルネスは集中することが必須条件なので、続けていくと集中力はつきます。ただ、あくまでオマケのようなもので、集中力をつけることを目的とすると本末転倒です」

日常にマインドフルネスを取り入れる

寝る前だけだけなく、日常的にマインドフルネスを取り入れることでストレス軽減が期待できる。食事の際には、スマートフォンを片手に考え事をしながら食事をするのではなく、味や噛みごたえ、匂いなどを感じ取ることで実践できる。また、同氏が指摘するのは会話の際、意外にも話をきちんと聞いていない人が多いことだ。



「他のことを考えながら話を聞くのではなく、相手が話していることはもちろんのこと、相手の表情などにも注意し話を聞きましょう。また、どのような方向へ会話を操作しようとしているのかといった自らのエゴや意図に気づきましょう」。まずは、目の前のことに集中することで、マインドフルネスを日常に取り入れることは可能だ。

東京マインドフルネスセンターは、週に3回ほど一般向けのクラスを開講しているほか、8週間に渡るMBSRプログラムも開催している。
長谷川洋介(はせがわ・ようすけ)◎東京マインドフルネスセンター/センター長・ディレクター、米国マサチューセッツ州立大学メディカルスクール主催MBSRクオリファイドティーチャー、鍼灸師、あんまマッサージ指圧師、日本マインドフルネス学会会員

文、写真=本多カツヒロ

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