「宇宙飛行士の臓器」を守る、ギリシャ発NASA承認技術の快挙

核物理学者マリアンティ・フラゴポール博士


━━博士、ギリシャが「オリオン」の最初の無人ミッションに参加するというのは、まるで空想物語、あたかもSFのようです。 NASAに承認された放射線量測定システムの開発はいつ着手したのですか?

10年前です。最初の提案は却下されました。ポジティブには評価されたのですが、完成度が低いと。放射線量測定の分野で全く存在感のない国から来た私は、海外でも不信に遭遇しました。私は「ギリシャ政府は宇宙関連の政策を何か打ち出しているんですか? 国としての方針は?」と聞かれたんです。

正直を言えば、この10年間で「もうやめよう」と思ったのは1度ではありません。ギリシャで、宇宙飛行士のための放射線防護システムを宇宙空間で実現する初のプログラムを提出したとき、皆が私をみる目はまさに「宇宙人」を見るそれのようでした。私にも、これが国の優先事項の一つではないことはわかっていたんです。でも、これは、一国にとっての優先度で評価するべき問題ではないとも思っていました。

その後、テッサロニキのアリストテレス大学にいた時分、ポスドク研究員として海外での実験や会議に参加したことがきっかけで出会った私の最初のメンター、トリニティカレッジのデニス・オサリバンから指導を受けました。テッサロニキ大学の同僚や、海外の同僚たちからの支援もありました。

彼らは私が、日本やアメリカなどでの相互較正実験(ブラインド実験)に参加できるよう、手助けをしてくれました。擬似宇宙的環境下での実験には、通常1時間につき何万ユーロもかかるのですが。



━━ギリシャ国家からの財政的支援はありますか?

いいえ。でも「ヘレニック・スペース・エージェンシー」(ギリシャ宇宙局)のような組織が設立されたことは非常にポジティブな動きです。

━━ヘラルド社の設立で、あなたのアイデアはどのようにビジネスへと進化しましたか?

ユーロバンクが後援する青年起業家育成プログラム「EGG」と出会っていなかったら、自分の研究をビジネスレベルに移行することはできなかったでしょう。EGGのようなイニシアチブは、真実ユニークかつ革新的、そして実現可能なアイデアや、ビジョンを持った人々に、その夢を実現する機会を提供します。それが新しいビジネスアイデア、新しい起業家が進化する唯一の手立てでしょう。

EGGに出会ってわずか6か月で、私は自分のアイデアを事業計画に変えることができました。研究者的な発想のみならず、ビジネスマンにふさわしい思考モデルの教育も受けました。非常に貴重なエコシステムに親しむこともできました。

最近は、たとえばイスラエルで投資家の人たちとコンタクトを取り、多くの企業とも出会うことができたのです。もちろん、資金がなければアイデアを生かせませんから。自分の資金もつぎ込みましたが、EGGが有力な投資家とつないでくれたことは非常な力でした。
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構成=石井節子

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