仮囲いアートを元にした動画
渋谷の再開発はその圧倒的規模から100年に一度の開発といわれている。街を歩けばどこかで工事音が鳴り響く。
今後10年以上にわたって行われる再開発、作る過程から楽しんでいくという趣旨で渋谷区は仮囲いにも力を入れ始めた。仮囲いから見えてくる渋谷の未来の形とは…。多種多様な仮囲いプロジェクトを実現させてきた副区長の澤田伸に話を聞いた。
澤田副区長とはどんな人
澤田は東京都23区で初めて民間企業から直接副区長になった。副区長になる前は、民間企業4社を経験し、一番長く在籍した博報堂は約17年間勤めていた。現渋谷区長の長谷部健が新入社員だったときの上司が澤田だった。
長谷部がその後九州支社に転勤になっても年に一回は会うような仲だった。野球観戦したり、ゴルフに行ったり、その後選挙に出るときも連絡が入った。
長谷部の右腕として正式に打診があったのは、長谷部が区長として当選した後だった。当時、澤田は共通ポイント企業の執行役員を務めていて、なかなか簡単にやめられない立場にいた。将来的な可能性はあるかもしれないが、今すぐには難しいと答えたという。
しかし、そんな澤田が再び気持ちを変えたのは全く予期しなかったことが起きたからだ。澤田の妻がくも膜下出血で倒れ、間も無く亡くなったのだ。通夜で住職が「人は生きているのではなく、生かされている存在」と話し、改めて澤田は自分の人生を振り返るようになった。
駆け抜けるように仕事をしてきた澤田は、その状態を「短距離競争をずっとやっている感じ」だと表現した。マーケティングは利益を持続的に追いかけることだ。今年も来年も利益を追う中で、「本当の利益」、つまり社会や地域を考えることも重要なのではないかと気づいた。議会の承認を得た上で、2015年10月1日から現在のポストについた。
これから、渋谷が目指すべき姿
(写真=ヘラルボニー)
民間企業から副区長になった澤田からみて、渋谷の抱えている様々な課題はもはやパブリックセクターだけでは解決できないと断言する。働き手は減少し、教育や福祉の問題は複雑化していく。それらの問題に新しいアイディアやソリューションが必要という思いがある。
「官公の自前主義はもう捨てたほうがいい。なんでも税金を投入して、建物を建てて、サービスを提供することには無理がある。渋谷に関わる多様な人々と協働しながら、セクターを超えて、まちづくり、福祉、教育政策等を実行していく必要があります」
「仮囲いアート」の発想もそんな思いから生まれたという。