しかし、金融教育の文化がない日本においては、高校生や大学生であっても大人からお金の話を積極的にしてあげる方がいい。今回は高校を卒業し、これから大学生活を送ろうとしている知人から相談を受けた際の話を基に書いていきたいと思う。
家計を見える化して自分を知る
高校を卒業して都内の大学へ進学する知人から、高校卒業前に相談を受けた。その内容は「一人暮らしをするからアルバイトをしたいけど、どんなバイトをするか悩んでいる」というものだった。特にこれといってやりたい職種があるわけではないので、どのように決めればいいか分からないということだが、筆者は、まず一人暮らしをするにあたって、毎月どれだけの金額がかかるかを考えてみようと話した。
大学までは実家から通い、学費も両親が払ってくれるということで、実際には1カ月のうちに自分が使うと予想されるお金についてだけ考えればよい。急に聞かれて少し悩んでいたが、3万円ぐらいという回答が返ってきた。
大学時代に役に立つかは分からないが、社会人になれば必ず役に立つ可能性があるので、筆者が株式アナリスト時代に習慣づけていたことを彼にも伝授した。それは、数字を因数分解するということだ。
なぜ1カ月の想定消費金額が3万円なのか。この数字はいくつかの数字を足し合わせて算出されたはずなので、まずは足し合わせた各項目を書き出してもらった。実際に書き出してみると、食費、交際費、交通費、携帯の通信費などスラスラと書き出したので、たいしたものだなと思ったが、項目の横に書いている想定の金額を見ていると、まだ因数分解があまい状態であった。
たとえば、1カ月の食費が5000円というのも、細かく見ていくと確度が高いかどうかが分かってくる。たとえば、平日5日間のうち3日大学へ行くとする。その際、クラスメイトと学食やキャンパス周辺の飲食店で食べるとして、1回500円かかるとすれば1500円かかる。それを4週間で掛けると、月の食費は6000円だ。
すでに予想を超えてしまっているが、本人の前でこの仮定を話すと、もう少し高いものを食べるかもしれないとか、平日は毎日大学に行くと思うなどという話が出てきた。そうすると、1カ月の食費はさらに上昇していく。
このように、必要となる金額を細かく因数分解して確度を上げて書き出していき、自分の1カ月の家計を見える化していくと、逆に自分が毎月どれだけ稼ぐ必要があるのかがリアルに実感できる。