より詳細には、自動走行車に搭載されたセンサーが外部の対象を認識し、車両のフロントガラスなどに表示する。例えば、道路にある制限速度の看板などを読み込み、運転者の目の前に再現するといった具合だ。SF映画に出てくるような、近未来の自動車を想像してもらうと分かりやすいかもしれない。
なおこのAR技術は、車両内に搭載される音声認識AI、ロボティクス技術などと連動する見通しだ。バイドゥは現在、人間の表情を解析して対話する自動走行車用のAIロボット「小度」(シャオドゥ)を開発している。小度は、運転者が口頭で指示を出すと、ナビゲーション、エアコンの調整などを行ってくれる。一方、運転者を監視しながら、居眠り運転や危険な行為に対して警告を促す。
小度はすでに、中国国内の車両に搭載されたことがあるが、今後、AIとARが連動することで、運転者はさまざまな形でサポートを受けていくことが可能となる。
補足までに、中国の特許データベース提供会社「incoPat(インコパット)」によれば、バイドゥは自動運転の特許出願数で世界6位にランクインしている。1位はフォード、2位はサムスン、3位はトヨタという順位である。
4月19日、池袋で起きた不幸な交通事故は日本中で物議となっている。87歳という高齢ドライバーが運転した車両が猛スピードで交差点に進入し、ゴミ清掃車などを巻き込みながら、複数の死傷者を出した。同事件の論点、また批判の対象となっているのは高齢ドライバーの運転能力だ。SNS上では、高齢者に「免許返納」を求める声が高まりを見せている。
この手の不幸な事故をなくすために、高齢ドライバーに「道徳」や「主体性」を求める行為は一見、正しいようにも見えるが、根本的な問題の解決には繋がりにくいだろう。一般的に、高齢者であるほど身体能力は低下し、モビリティ手段は生活に欠かせなくなるからだ。
解決策としては、自律走行などテクノロジーによる管理しかない。近年では、シートベルトを締めないとアラートが鳴り続けるようになったが、同じような仕組みで解決していく方が合理的ではないだろうか。もちろん、ことは高齢者の運転に限らない。煽り運転や飲酒運転など、昨今話題となっているイシューも同様だ。
AIやロボティクス技術の発展動向を鑑みれば、テクノロジーで解決できる交通問題はかなり広範囲にわたるはずである。
連載:AI通信「こんなとこにも人工知能」
過去記事はこちら>>