これまでは、事前に現地宿泊先から発行されるバウチャー(予約証明書)を手配し、それを持って大使館に足を運び、パスポートを1週間預けてビザを申請するというの面倒な手続きがあったが、それが大幅に省略された。
航空券とホテル予約の手配をすませておけば、入国の4日前までに在日ロシア連邦大使館のウェブサイト経由でビザの申請をするだけで済むのだ。費用もいっさいかからない。
日本からフライト2時間圏内にもかかわらず、まさに灯台下暗しだったウラジオストクという西洋の街並みが広がる美しい港町が、こうして身近な渡航先として知られるようなったのである。
2012年に改装されたウラジオストク国際空港のモダンなターミナル
ロシア沿海地方で発給される電子簡易ビザは、空路で入国する場合だけでなく、海路で行く場合にも適用される。あまり知られていないが、鳥取県の境港からのウラジオストク航路が通年で週1便運航されているからだ。
これは、韓国の船会社が運航しているDBSクルーズフェリーで、とても豪華客船と呼べるような乗り心地ではないが、韓国の東海経由の2泊3日の旅程となる。今年のGWのように連休が長ければ、船旅が好きな人にとっては、日本海をのんびりと渡る海外旅行も、なかなかの味があるかもしれない。
ウラジオストクの国際フェリーターミナルに停泊する境港発DBSクルーズフェリー
国境の町、中国の綏芬河で1泊
ロシア沿海地方への入国には、実は第3のルートもある。それは正直なところ、日本からウラジオストクを訪ねるツーリストには変則的すぎるのだが、国際列車を使うというものだ。陸路によるボーダーツーリズムの旅である。
その列車とは、中国黒龍江省東南部の綏芬河(すいふんが)からロシア国境の町グロデゴヴォまでのわずかな間を走っている。綏芬河は、かつてポグラニチヌイと呼ばれた帝政ロシアが建設した町だ。
この町は、19世紀後半に驚くべき早さで延伸されたシベリア横断鉄道において、ウラジオストクまでの最短ルートとして満洲北部を走り抜ける東清鉄道の中国側最東端に位置している。ロシア正教会や東清鉄道関連の優美なロシア建築の残る町で、今ではお隣ロシアから多くのツーリストが、中国の安価な日常雑貨を買い物しにやって来ており、街中にロシア語表記があふれている。
ここでは鉄道経由でロシアに入国する場合のみ、電子簡易ビザが発給されるが、綏芬河駅の隣にある国際バスターミナルからバスで向かう場合は、現状では発給されないので注意が必要だ。
では、この辺境の地である綏芬河までどうやって行けばいいか。中国国内の高速鉄道網の著しい拡大と日中間の航空路線の増大により、思いのほか簡単といってもいいかもしれない。