その女性とは、ロシアのEコマースサイト「Wildberries」の創業者のタチヤーナ・バカルチュク(Tatyana Bakalchuk)だ。Wildberries の2018の売上は19億ドル(約2100億円)に達した。
Wildberriesは200万人のデイリーユーザーをロシアやベラルーシ、カザフスタン、アルメニア、キルギスから集めており、アパレルから化粧品や玩具まで、あらゆるジャンルにまたがる1万5000ブランドを扱っている。
フォーブスの試算ではWildberriesの企業価値は10億ドルに達しており、同社の株式を一人で保有しているバカルチュクはビリオネアであると推定できる。
ロシアにはもう一人、女性のビリオネアがいる。元モスクワ市長のユーリ・ルシコフを夫に持つエレーナ・バトゥーリナ(Elena Baturina)だ。ルシコフが2010年にモスクワ市長を解任された後、バトゥーリナと娘たちはロシアを離れた。
バトゥーリナはロシアの資産の大半を売却し、欧州や米国でホテルや不動産を購入した。彼女は現在、ロンドン在住で資産額は12億ドルとされている。
Wildberriesの創業者のバカルチュクは2004年に、28歳で同社を創業した。彼女は産休中にモスクワのアパートで、Wildberriesを立ち上げたのだ。生後1カ月の我が子を育てながら、自宅に居ながら子供服が買えるサービスがあればいいのにと、バカルチュクは思った。
夫のVladislavはITエンジニアで、会社を辞めてWildberriesの運営に専念することにした。創業当初はドイツのEコマースサイトOttoから、衣料品をバルクで購入し、写真を撮った後に転売していた。
その後、配達人を雇い、モスクワや周辺の都市向けに配送するようになった。また、郵便でロシアの他の地域にも発送していた。Ottoとの関係は4年続いたが、その後はメーカーから直接仕入れるようになった。
当時、ロシアのEコマース分野には競合企業がおらず、ビジネスを始めるのに理想的な時期だった。今日においても、ロシアのEコマース市場はまだ初期段階にある。
モルガン・スタンレーの2018年9月の報告によると、ロシアのEコマースの市場規模は180億ドルとされ、独占的なプレイヤーが存在しない最後の新興国市場だという。
Wildberrriesはロシアの市場の推定4.7%を抑えており、Yandex Market(10%)やアリババ(8.5%)らに続いて3位となっている。これらの3社が取り扱う品物は、どれも似たようなアイテムだ。ロシア市場には小規模な業者が乱立している状態だ。
モルガン・スタンレーは、Wildberriesにはファッション分野で強みがあると述べている。しかし、ロシアのEコマース分野では、市場を支配する企業がまだ現れていない。
Wildberriesは今後の事業計画を明らかにしていない。しかし、同社の担当者は「ビジネスの拡大こそが我々の戦略だ」と述べた。