LiDARの世界最大手「ベロダイン」がADASセンサー市場に参入

David Becker / by Gettyimages

自動運転の「視覚」と形容されるLiDARセンサーの世界最大手として知られるのが、米シリコンバレー本拠のベロダイン(Velodyne)だ。同社の創業者のDavid Hallは今から10年以上前に、回転式のLiDARセンサーを開発した。

ベロダインは先日、ADAS(先進運転支援システム)向けセンサー市場に参入することを明らかにした。

2007年に自動運転車の開発競争が始まって以降、ベロダインはほぼ全ての実験車両に回転式LiDARを提供してきた。Hallによると、同社はこれまで3万台のLiDARを出荷し、累計売上高は5億ドルに達するという。今後は、自動運転車向けセンサーの製造と並行して、大きな需要が見込めるADAS向けセンサーの開発も手掛けるという。

「ADAS向けセンサーは製造コストがLiDARより低く、より大きな需要が見込める。我々は、レベル4〜5の自動運転車向け製品を手掛けているが、まだ生産量を増やす必要に迫られていない。現状では、ブラインドスポットの検出やADAS製品の方がニーズが高く、短期的には自動運転車向け製品よりも大きな売上が見込める」とHallは話す。

ベロダインの回転式LiDAR センサーの上位モデルは、128個のレーザー送受信センサーを備え、測定距離は300メートルに達する。Hallによると、同社のLiDARは他のどの製品よりも詳細なイメージを生成可能だ。しかし、価格は1台当たり数千ドルもし、まだ広く普及するには至っていない。

LiDARは、カメラやレーダーと連携して3次元点群データを取得し、車両の周囲環境の3次元マップを生成する。この技術により、自動運転車は夜でも路面状況を正確に把握することができる。

ベロダインは、長年LiDAR市場で独占的なシェアを握っており、高価な価格設定で製品を販売することができた。例えば、64本のレーザーを照射するバケツ型LiDARは1台7万ドルもする。しかし、この数年はLuminarやInnoviz、AEye、LeddarTech、Ouster、TetraVueをはじめ、中国のスタートアップが参入し、競争が激化している。

ウェイモは自社製LiDARの外販を開始

グーグル系の自動運転車開発企業ウェイモは、グーグルの自動運転プロジェクトだった時代にベロダイン製LiDARを使っていたが、現在では自社製LiDARを開発している。同社は今月、Laser Bear Honeycombという近距離向けのLiDARをリリースし、提携企業に販売すると発表した。

現在も非上場を続けるベロダインは、1980年代に高級オーディオ部品メーカーとして設立された。同社は、この数年でフォード、バイドゥ、ニコンと戦略的パートナシップを締結し、これらの企業から総額2億ドル(約220億円)を調達している。

ベロダインは2017年、高度に自動化された約1万8600平方メートルの巨大なLiDAR製造工場をカリフォルニア州サンノゼに設立し、競合他社を遥かに上回る生産キャパシティを手に入れた。また、日本にもニコンと共同でLiDAR組み立てラインを建設する予定だ。

さらに、スウェーデンの自動車用安全部品メーカー大手Autoliv傘下のVeoneerとライセンス契約を締結し、年間のセンサーの生産台数を数百万台規模まで増やす計画だ。

Hallによると、ライバルの増加などの環境の変化を受け、ベロダインは戦略変更を余儀なくされたが、より高品質で安いLiDARの開発も進めているという。現在取り組んでいるのは、デジタルカメラを統合したLiDARだが、これはスタートアップのAevaが盛んに宣伝している機能だ。Hallは、この新機能のリリース時期については明らかにしなかった。

他にも、テスラの「オートパイロット」やゼネラルモーターズの「スーパークルーズ」と同じような高速道路を自律走行できるソフトウェアを提供する計画もあるという。Hallは、これまで長年に渡りノウハウを積み重ねてきたため、新規参入企業を脅威に感じないという。

「まだ誰も究極のLiDARを開発していない。我々は、LiDARを最終形態に進化させるために積極的に取り組んでいる最中だ」と彼は語った。

編集=上田裕資

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