イノベーション・エコシステムの内側

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オランダ、ベルギーと併せて「ベネルクス」と呼ばれるルクセンブルク。面積は2586平方kmで神奈川県や佐賀県と同じぐらい、人口も約57万人の小国ながら、1人当たりのGDPは、1992年以降、世界一の座を保っている。2018年は約11万4000ドルで、日本円にして約1254万円。ちなみに、日本の1人当たりのGDPは約4万ドル(約440万円)で、世界第25位だ。

近年、ルクセンブルクでは多くのスタートアップが生まれ、一部は大きな企業に成長。いまやヨーロッパでのイノベーションのハブとのひとつと言える国となった。前出のGDPにも、それが顕著に表れていると言えよう。


もともとルクセンブルクは金融で栄えているというイメージだが、最近はフィンテックや宇宙関連のスタートアップを多く輩出していると聞く。ルクセンブルクという国の現況について、東京の大使館内にあるルクセンブルク貿易投資事務所の松野百合子さんの話を基に、以下にまとめてみた。




グローバル視点の政策と宇宙ビジネス

ルクセンブルクは、常に政治家、官僚、民間が海外を見渡しながら話し合い、時代に合わせた政策を取り、発展してきた。

金融の面では、プライベートバンキングの分野でもスイスと並んでヨーロッパで重要な地位を占めていたが、1980年代EUがEU共通のルールによって設立・運用されるファンド、いわゆる「パスポート・ファンド」の制度を発表すると、他国に先駆けて国内法を制定。これが欧州内外の、多くのクロスボーダー志向の運用会社に利用され成功すると、さらに各国企業のニーズを取り入れて法制度を進化させてきた。

これにより、ルクセンブルクにはグローバルに流通するファンド市場が実現し、今ではファンドの預かり拠点として4兆ユーロ(約500兆円)を運用し、ニューヨークに次いで世界第2位の実績を誇っている。

そんな中、最近ルクセンブルクが注目を集めるようになった理由は、「政策として2010年頃から進めていたスタートアップ支援が、ようやく見える形になってきたからだ」と松野さんはいう。

行政のイノベーション創出のためのスタートアップ支援は手厚く、「Luxinnovation」という経済省のイノベーション促進機関では、ルクセンブルクで創業するスタートアップ企業へのサポートを国籍関係なく実施している。昨年、日本の感情解析AIのスタートアップ「エンパス」が現地のピッチで優勝したこともあり、日本のスタートアップへの期待値も上がっている。

特に注目を集めているのは宇宙関連だ。民間ベースによる宇宙ビジネスを語るときに、アメリカや中国と並んで、ルクセンブルクの名前が語られるようになってきた。国の規模から考えて、なぜルクセンブルクかと思われるだろうが、その存在感は日に日に増している。

ロケット開発など多額の資金が要るものは自ら手がけずに、法整備をして、海外から事業者を呼び込み、自分たちはプラットフォームに徹する。日本の航空宇宙産業のスタートアップであるispaceも、ルクセンブルクにも拠点を置いている。

また、昨年リリースした政府の宇宙ファンドは、国内外問わず投資ができる。ルクセンブルクが国策とする宇宙資源ビジネスは、地球以外の星で資源を採掘して、さらに様々な用途でそれを活用し、利益を得るという未来を描いているという。

文=森若幸次郎

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