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2019.03.18 06:30

「IDEOのような国産デザイン組織をつくりたい」──この10年でデザイン業界に起きた変化とは?

DONGURI CEO ミナベトモミ

DONGURI CEO ミナベトモミ

今ほど経営/組織におけるデザインの重要性が高まっていなかった時代から、「IDEOのような国産デザイン組織を目指す」と言い、自社/他社問わず組織にデザインをインストールすることに向き合ってきた企業がある。
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北区・王子に拠点を構えるデザインコンサルティングファーム「DONGURI(ドングリ)」だ。創業は2012年3月。

同社の特徴は戦略コンサルやUXリサーチャー、ファシリテーターなど多種多様なバックグラウンドを持った専門家がプロジェクトに合わせてチームを結成。ハンズオン組織変革、サービス変革(デザイン思考)、マーケティング変革、ブランド変革を軸にハンズオンで事業や組織のイシュー解決に取り組んでいく点にある。

例えば、これまでにビズリーチ デザイン本部の組織戦略企画と実行の支援、コカコーラの新製品立ち上げ、30周年のストリートファイターとコラボした、佐賀県の地方創生プロジェクト「ストリートファイター佐賀」などを手掛けてきた実績を持つ。
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創業から7年。「PRドリブンになるのは嫌だったので、実績と実力を身につけてから発信をしたかった」と、これまでアウトプットを出すことに注力し、発信を控えめにしてきた同社が先日、CI(コーポレートアイデンティティ)とコーポレートサイトをリニューアルした。なぜ、このタイミングでリニューアルに踏み切ったのか。デザイン業界の変化と共に、その決断の思いをDONGURI代表のミナベトモミに聞いた。


リニューアルしたDONGURIのCI(コーポレートアイデンティティ)

10年前、デザイン組織的な考えはニッチな分野だった

2018年5月、経済産業省・特許庁が「デザイン経営」宣言を出したことで経営におけるデザインの重要性が高まり、デザイン組織の立ち上げに取り組む経営者が増えている。「デザイン経営宣言が発令されたことでメジャー分野となり、一気にデザイン組織に対するニーズが高まった」とミナベは語るが、創業当時は状況が全く異なったという。

「10年前はデジタルアワードが全盛の時代。当時は“スターの優れたアイデア”が至上とされており、デザイン組織的な考え方はニッチな分野でした」(ミナベ)

そんな時代にミナベがDONGURIを立ち上げ、ニッチな分野だったデザイン組織の開発に取り組み続けてきた理由──それは「デザイン組織におけるフレームをナレッジとして蓄積し、国内のデザイン組織にシェアすることが、日本のデザイン業界全体の底上げにつながる」と思っていたからだ。

ミナベは大学時代、デザイン学系を専攻。将来は研究者になりたいと考えていた。

「国内のデザインアカデミックにおいて基礎研究が盛んですが、現場で応用研究する事例は少ない状況です。一方、海外は研究者と実践者が連携し、基礎研究と応用研究もシステマティックにうまく回している。自分の知る限りでは国内に実証研究できる環境がなかったので、研究論文をもとにし応用研究をしたいと思っていたんです」(ミナベ)

結果的に大学卒業後は研究者の道を歩むのではなく、家電メーカーに就職。プロダクト開発のマネジメントやIA設計を手がけた後、独立。DONGURIが誕生した。

創業時、日本国内でデザイン組織のような考えを持つ人は圧倒的マイノリティーだったが、ミナベは「海外ではデザイン思考ベースに組織づくりを行う考え方は当たり前になっていたので、10年後には日本にもその流れがやってくる」と考え、10年間、組織開発に取り組み続けてきた。


戦略コンサルからDUNGURIへと転職してきた、戦略モデリストの濱脇賢一
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文=新國翔大 写真=小田駿一 写真提供=DONGURI

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