では、どうしたらアイデアの源泉となるようなヒントを見つけ、インスピレーションを得ることができるのか。 今回は前編に続き、IDEO Tokyoのデザインリサーチ・リード、アメリア・ジュール(Amelia Juhl)が、今すぐ実践できるインスピレーション探しのコツを紹介する。
インスピレーション探しは、既存のパターンを壊し、新たな思考プロセスを引き出すエクササイズだ。以下のコツを実践することで、あなたのデフォルトの思考プロセスが変わるかもしれない。
1. 探究心をもって傾聴する
まずは、話を聞く相手に対し、熱心に耳を傾ける。人は誰もが、それぞれ独自の経験や意見、専門知識を持っている。デザインリサーチにおいては、そうしたことが人々の話を聞くときにバイアスとなる可能性があることを理解した上で、 傾聴することが大切だ。
ホワイトボードの文字を一気に消すように、自分の頭のなかをまっさらな状態にして、推測や先入観、固定観念を一度捨てる。相手が言っていることを即座に分析しようとしたりせず、今聞いていることに集中するのだ。質問をする際は、YES/NOで答えられる形ではなく、フリーアンサー式にする。
そして、自分が求める答えに誘導してしまわないように注意を払いつつ、会話が思わぬ方向に逸れたとしても、気にすることはない。そうすることで、相手もあなたと出会わなければ考えもしなかったような、彼ら自身の新たな側面について話し始めてくれるかもしれない。
2. レンズを変えながら観察する
ひとつのものをいくら一生懸命集中して観察しても、自分のものの見方がいつも一定だと、同じものしか見えてこない。見慣れたものや風景を、新たな角度から見る習慣をつけよう。
たとえば、朝の通勤の際、一つ色を選んで、その色を思い浮かべながらいつものルートを歩いてみる。
毎日の通勤は、一見同じことの繰り返しだが、ひとつの色を意識すると、それまで見えていなかったものが新たに見えてきたりする。まるで、いつもと違うルートを歩いているような感覚になるかもしれない。新たなアイデアの種は、いつも見ている風景のなかなど、身近なところに潜んでいることもあるのだ。
また別の日には、五感のうち一つを選んで、その感覚だけに集中してみよう。通勤の際、何に触れているだろう(触覚)、どんな匂いを嗅いでいるだろう(嗅覚)、目隠し状態で誰かに誘導してもらったらどうなるか(視覚)。こうした経験は、あなたの日常への理解をどのように変えるだろうか。