国勢調査局とバージニア州ジョージ・メイソン大学の研究者らは今年2月、「米ハイテクセクターにおける移民起業家とイノベーション(Immigrant Entrepreneurs and Innovation in the U.S. High-tech Sector)」と題した報告書を発表。その中で研究者らは「移民が所有する企業では、16の異なるイノベーション指標のうち15において、その水準が一様に高いことが確認された」と述べた。
つまり、研究者らが評価のため使用した測定基準の93%以上で、米国への移民が米国人に比べてより革新的であることが示された。
研究者らは、国勢調査局がまとめた2014年起業家年次調査(ASE)のデータを分析し、この驚くべき結論に達したと述べている。同調査の対象となった企業は全て売り上げが1000ドル(約11万円)以上で、給料をもらっている従業員が1人以上いる企業だ。今回の研究者らはその中から、STEM分野(科学・技術・工学・数学)に関わる企業のサンプルを選んだ。
研究者らは、企業の所有者が米国人か移民かも特定。報告書によると、最終的なサンプルに含まれたのは約7400社の企業と約1万1000人の企業所有者だ。
研究の著者らは「移民がどれほどイノベーションに貢献しているのか」という問いに答えるため、詳細な商品・プロセスのイノベーションや研究開発(R&D)、イノベーション関連の知的財産権(特許を含む)など、広範な評価基準を使用した。その中で、米国への移民が米国人に比べて顕著に低い成績を収めたのは、著作権と商標の分野だけだった。
報告書によると、移民の方が米国人起業家よりもはるかに高い教育を受けているという事実を考慮した場合でも、イノベーションレベルの差は存在する。研究者らは次のように述べている。
「ハイテクセクターでは、移民の起業家は米国人起業家と比べ、平均的にはるかに高い教育を受けている傾向にある。しかし、教育や所有者のその他の特性を考慮し調整した場合でも、移民が優位な立場にいることは変わらなかった」
これを別の角度から見ると、上級学位を持つ移民が多く働く会社では、学士号を持たない人が経営する会社よりもはるかに多くのイノベーションが起きるだろう、と報告書は述べている。
また調査からは、最近設立された企業の方が創業されてから長い時間がたった企業よりもイノベーション水準が高いことも示された。しかし、移民は会社の設立年数にかかわらずプラス効果を生んでいた。
こうしたシンプルな結果は、一部の人にとって受け入れ難いことだろう。米国への移民は、米国が自分の得意分野だと思っていた技術革新において米国人を簡単に打ち負かしているのだ。