ビジネス

2019.03.15 06:00

「小さな大企業」に選ばれた日本の3社 無名ゆえの戦略とは




関係性の「質的転換」

世界最古の眼鏡メーカー「アメリカンオプティカル(AO)」社の日本総代理店としてスタートした眼鏡メーカー、ブロスジャパン。福井県鯖江市の熟練職人の手で、AOクラシックフレームを蘇らせ、全世界へ供給した。これを足がかりに、独自開発の新ラインで、アジア展開を進める。

市場拡大の鍵となったのは、代表の浜田謙の「友人」戦略だ。プロダクトを「作品」として捉え、それに賛同してくれた取引先にだけ、「友人」として眼鏡を売る。顧客をプロダクトの魅力で感動させることによって、その仲間に口コミで良さが広まり、ファン層の拡大を狙う。企業が主張するメッセージへの共感が購入動機になる、いまの消費傾向をよく捉えている。

特筆すべきは、友人になるための努力、そして友人を大事にする努力を惜しまないことだ。本社2階のゲストルームは、取引先を鯖江に招いて直接工場を見てもらい、自分たちのものづくりのファンになってもらうためのもの。職人の仕事ぶりを見れば、芸能人やファッション業界関係者なども支持する華やかな眼鏡ブランドが、こんなにも一本ずつ手塩にかけて作られているのか、と感動するはずだ。

口コミで広まる感動の源泉をつくる大切な職人たちへの値切りは一切しないと決めている。

最後は、埼玉県入間市のインダストリアだ。イギリス、中国、韓国、タイなどに拠点を置いて、主要製品を52カ国に累計12万3000本納入する実績を誇る。ここでも鍵となるのは、顧客との「関係性」だ。

主力製品の「FILSTAR」は、水の流れだけで高精度にろ過するフィルター。交換不要のため手間やコストを軽減でき、環境への負荷も少ない。トヨタ、BMW、GMなど世界の一流工場が彼らの顧客だ。

一方、顧客の中で、かつてPCメーカーが「Intel Inside」とうたったように、「FILSTAR Inside」をうたう企業がある。大手工作機械メーカーのDMG森精機だ。

FILSTARが入っている自分たちの機器は、燃費が良く、産業廃棄物に配慮しているとアピールする。大手自動車メーカーだけでなく、工作機械にも組み入れられ、正に「共生」することで販路を広げてきたのだ。また、海外展開においては、特に東南アジアなど「工場を新設したいのにインフラが未整備な国」にある「水質を低コストで改善したい」というニーズを察知してアプローチしたことが功奏した。

これら3社の例から分かるように、地方の無名企業が世界に必要とされる存在になれたのは、「関係性の質の転換」が大きな要因と言えるだろう。長く共存できる関係性とは何か。環境の変化にも対応できる強い経営のヒントは、ここにある気がした。

文=Forbes JAPAN編集部 写真=古澤健太

この記事は 「Forbes JAPAN ニッポンが誇る小さな大企業」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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